複雑すぎる原価管理、IoTでどうカイゼンするか:トヨタ生産方式で考えるIoT活用(4)(5/5 ページ)
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説していきます。第4回となる今回は、原価管理におけるIoTの活用ポイントについて紹介します。
原価管理へのIoTの活用ポイント
次にこうした原価管理をより高度化し、精度を高めるためのIoTの活用ポイントについて説明していきます。
1.データ収集の効率化
データを設備から自動的に収集することにより、データ収集に人出を介さずに精度の高いデータを連続して収集することが可能となります。今回は原価管理において重要なポイントに絞って説明します。
- (a)設備稼働情報
設備の金型に耐熱性のバーコードをつけてセンサーで読み取れるようにしたり、リライト可能なかんばんを使用したりすることで、実際に生産している品番ごとに「加工した数」「加工に要した時間など」の情報を精緻に収集することが可能です。通常、設備加工費は全体の稼働時間を加工した数で割り、複数品番の原価を一律に算出するのが一般的です。しかしこの方式の場合は、品番ごとに加工時間が異なるものの、設備の加工費を個々の品番ごとに算出することが出来ます。
- (b)検査実績による良品、不良品の数
本連載の第3回目で説明した検査工程の自働化により、全品検査への移行による精度向上が図れる説明をしましたが、この検査データを利用して「良品数」「不良数」の情報を人手を介さずに収集することが可能になります。組立工程では不良率はゼロに近いのですが、前工程にさかのぼり、設備中心の工程になると工程特性により不良が発生します。設備中心の工程の原価管理上、不良品を作るのに掛かった原価をしっかり把握することが、管理上とても重要となります。実際の現場では、不良品の発生は心理的に隠したくなってしまう傾向にありますが、こうした情報を正しく把握できるのは大事なことです。
2.現場への改善ポイントの提示
前項で現場は原価を提示されても、どう改善につなげたらよいかわからないといった説明をしましたが、原価算出に使用したデータを元に現場が理解できる表現に変えて原価改善につなげる事が必要です。その表現の事をKPIとか生産管理指標と呼んでいます。この解説について次回詳しく説明します。
IoTの導入効果
原価管理にIoTを活用することで、次の効果が見込めます。
- 商品別部品別にもうかった、もうからなかったことが把握できるようになるため、事業の選択と集中の意思決定の幅が広がる
- 同じデータを元に原価算出から現場改善活動へとつなげることができるため、トップと現場のコミュニケーションが円滑になり現場改善活動が促進される
- 製品設計、工程設計上の問題点(不具合、コスト)が明確になることにより、次期製品開発に生かすことが可能となる
以上で原価管理にIoTを活用する方法についての説明を終わります。次回は生産現場の改善活動におけるIoTの活用手順について紹介します。
筆者紹介
株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)
NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、
原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。
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