幾何公差って測定はどうなるの?:寸法を実感する! 測定講座(1)(3/3 ページ)
近年、幾何公差の普及の必要性が求められているが、製造する側ではその測定方法への課題が大きく、幾何公差に対応した測定技術の普及との同調なくして成立しないというのが現実である。本連載では幾何公差や寸法測定の課題に対する幾つかの取り組みを紹介していく。
さらに、実際に公差を指示する公差記入枠ですが、まず枠の上に記載しているのが、公差を指示する対象の形体の寸法公差で、ここでは、φ10±0.01の穴径です(図4)。「2×」となっているので、2カ所です。
公差記入枠への記入は左の枠から順に、公差記号(ここでは位置度)、公差値(規格値)、データムの順となっていて、詳しくは次回以降に説明します。この例は、2つのφ10±0.01の穴の中心軸の位置は、このワークの底面A、図面上下側の面B、同様に左側面C(A,B,Cはこの順の優先順位で基準面となる)を基準として、φ0.05の円筒公差域の中に入らなければならないという指示となります。従来慣れ親しんだ寸法公差表記によれば、それぞれの穴の位置を示す寸法に、縦横、厳密には斜め方向の公差を入れて指示しなくてはならないところをこの公差記入枠1つで指示することができ、スッキリとした図面となります。また、基準面の指示も注記を用いることなく記号で表しているので、図面を見る人が他の言語圏の人であっても、曖昧さを残すことなく理解し合うことが可能です。
本シリーズでは、各幾何公差に関して、実図面の中でどのように用いられ、測定はどのように行うかについて解説し、実際の測定結果は測定機、測定方法によって、どのように違うか、などを皆さんと一緒に検証し、共有して行きたいと考えています。次回以降、順次連載して行きますので、お付き合いをよろしくお願いいたします。
筆者紹介
木下悟志(きのした・さとし)
プラーナー 研修推進室 室長 シニアコンサルタント。セイコーエプソンにて34年間勤務。プラスチック応用の開発経験が長く、非球面レンズや超小型ギヤードモーターの開発から量産、マーケッティングまで経験した。また基幹商品であるウオッチ、インクジェットプリンタ、プロジェクターの要素開発にも長く関わった。近年は研究開発部門のマネジメントにおいて開発の意思決定や外部との共同研究・共同開発の方向付けをした。材料開発、機構設計、プロセス開発、計測技術開発と幅広い知見を持つ。2015年より、設計者の能力開発を支援するプラーナーのシニアコンサルタントとして、幾何公差と計測技術を融合したセミナーを創出し、担当している。大手企業をメインに多数の企業で連日セミナーを担当し、実践コンサルも行っている。
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