介護予防から脱介護へ、GEヘルスケアが「歩行の見える化」で貢献:医療機器ニュース
早稲田エルダリーヘルス事業団とGEヘルスケア・ジャパンは、歩行リハビリテーションの数値化と見える化を実現したシステム「AYUMI EYE(アユミ アイ)」の開発と導入展開について説明。介護度を悪化させない「介護予防」から、介護度を改善する「脱介護」が可能になるサービスを提供する。
早稲田エルダリーヘルス事業団とGEヘルスケア・ジャパンは2016年2月22日、東京都内で会見を開き、歩行リハビリテーションの数値化と見える化を実現したシステム「AYUMI EYE(アユミ アイ)」の開発と導入展開について説明した。
早稲田エルダリーヘルス事業団は、介護サービス事業として早稲田イーライフを展開している。同事業団社長の筒井祐智氏は「早稲田イーライフの主な事業は、介護度を悪化させないための『介護予防』だ。現在、全国93施設で約7000人に通ってもらっているが、今回発表するAYUMI EYEの導入によって、介護度を改善していき、100歳になっても元気に歩いてもらえるような『脱介護』を目指したい」と語る。
会見に参加した、早稲田エルダリーヘルス事業団の筒井祐智氏(左)、GEヘルスケア・ジャパンの伊藤久美氏(中央)、早稲田大学エルダリー・ヘルス研究所の荒木邦子氏。早稲田イーライフ田園調布(東京都大田区)で行われた
AYUMI EYEは、腰部に装着したウェアラブルセンサーの3軸加速度センサーの情報を使った歩行解析を行うシステムである。CTやMRIといった大型の医療用診断装置で知られるGEヘルスケア・ジャパンが、高齢化が加速度的に進んでいる国内で求められる新規事業として開発した。GEヘルスケア・ジャパン チーフ・マーケティング・オフィサーの伊藤久美氏は「病院向けの医療機器であるCTやMRIは開発に3年以上かかる。一方、AYUMI EYEは非医療機器であり、より機動的な開発体制が必要。そこでファストワークスアプローチを採用し、3カ月で開発を完了させることができた」と語る。
従来は理学療法士向けに「歩行の見える化」の手段として提供されていたAYUMI EYEだが、市町村で行われている健康祭りなどのイベントでのアンケート調査から「より良い歩行を行うための運動方法を知りたい」という要望が強いことが分かった。そこで、介護予防のためのトレーニングに詳しい早稲田エルダリーヘルス事業団と共同し、AYUMI EYEの評価結果とトレーニングを結び付け、脱介護が可能になるアプリケーション開発に取り組むこととなった。
共同開発したサービスでは、AYUMI EYEによる歩行測定結果を基に、推進力、バランス、リズムの3つの項目と総合評価で点数をつける。そして3項目の点数を改善する方法と、その方法に対応する早稲田イーライフのトレーニングメニューを提案するという内容になっている。3カ月に1回のペースで測定を行うことで、評価点の改善などを確認できる。「点数を付けると『平均と比べてどうなのか』と聞かれることが多いが、あくまで個人の歩行を維持改善するための点数。『結果が点数になっているので分かりやすい』『点数が上がるとうれしい』などユーザーからの評価も高い」(早稲田エルダリーヘルス事業団)という。
早稲田エルダリーヘルス事業団と連携する、早稲田大学エルダリー・ヘルス研究所招聘研究員の荒木邦子氏も「『歩行の見える化』によって、健康寿命と深く関わる“歩行”というものへの意識変化を持たせられることに注目している」と述べている。
またAYUMI EYEの導入は他にもメリットがある。これまで身体機能測定には20〜30分かかっていたが、AYUMI EYEは腰部にウェアラブルセンサーを装着して短い距離を歩行するだけなので1〜3分で済む。測定を受けるユーザーの負担が少なく、測定数値の再現性も高い。
既に早稲田イーライフの直営店11施設に導入されており、2016年3〜4月にかけて全国の93施設に導入を拡大する予定だ。「早稲田イーライフの利用者へのサービスを充実させる形でAYUMI EYEを導入する。利用者の負担増になることはない」(早稲田エルダリーヘルス事業団の筒井氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ヘルスケア向けウェアラブル機器、“価値の創造”はまだこれから
ヘルスケア向けのウェアラブル機器は勢いに乗っているように見える。確かに、製品は大量に市場に投入され始めてはいるが、「本当に価値を提供できるサービスにはいきついていない」という見解もある。 - リハビリのためのモジュール型ウェアラブル歩行支援機器
京都大学は、歩行に障害を抱える人々のリハビリ向けに、長下肢装具に取り付けるだけで歩行支援ロボットとして使える「モジュール型wearable歩行支援機器」を発表した。 - MRIの撮像技術を競う“甲子園”、テーマは「過去の発表を改良せよ」
GEヘルスケア・ジャパンが、同社MRI(磁気共鳴画像診断装置)のユーザー会「第11回Signa甲子園2015」を東京都内で開催。全国の予選を勝ち抜いたMRIのユーザーである技師が、自身の創意工夫を加えた撮像技術を発表する場であり、“甲子園”と呼ぶにふさわしい熱気に包まれた。 - GEヘルスケアが日本発の次世代MRIを投入、3.0T機で1.5T機と同じ設置面積
GEヘルスケア・ジャパンは、医療用画像診断機器の展示会「2015国際医用画像総合展(ITEM2015)」において、磁場強度が3.0TのMRI「SIGNA Pioneer」の実物大モデルを展示した。日本で開発・生産するSIGNA Pioneerは、日本をはじめグローバルのニーズを反映した製品で、1.5TのMRIからの置き換えに最適な設置面積を実現している。