本記事は、CADを快適な環境で使ってもらうソリューション専門街「CADJapan.com」から転載しています。
3次元CAD上で動く設計者向けCAEがリリースされてから10年以上がたちました。発売された当時は「おもちゃみたいで、まだまだ機能不足だ」「設計者には難しくて使えない」など批判的な意見も多かったですが、最近では当たり前のように利用されるようになってきました。
当社でも設計者向けCAEを「デザインCAE」と名付け、設計者のCAE活用をお手伝いしてきましたが、導入後、短期間で効果を出しているお客さまにはある共通した傾向が見受けられるようです。それは「精度」と「スピード」のバランス感覚がとても優れているということです。
「精度」と「スピード」のバランス感覚とはどのようなことなのか? デザインCAEの特徴を交えて紹介します。
精度と仮定条件について
「デザインCAEは価格も安いが精度も悪い」、といった誤解をされているケースがまれにありますが、これは間違っています。デザインCAEは低価格であっても精度が高いものがほとんどです。ではハイエンドCAEとの違いは何でしょうか?デザインCAEとハイエンドCAEの違いの1つとして「仮定条件」が挙げられます。例えば「仮定条件」としては以下のようなものがあります。
- 材料は降伏点を超えても物性値が変わらない。
- 変形は微小である。
- 固定方法や、接触条件などが計算中に変わらない。
- 荷重は時間で変化しない(常に一定の力が働いている)。
解析に詳しい人であれば「線形と非線形」「静解析と動解析」などといっているのが上記内容になります。例えば変形の大きな現象をデザインCAEの線形解析機能で解こうとすると結果はあまり合いません。つまりデザインCAEは精度が悪いのではなく、ある程度条件が限定されると考えればよいでしょう。
皆さんが普段使われる電卓は、EXCELなどに比べて機能は限定されていますが「精度が悪い」なんていう人はいないと思います(※)。
デザインCAEは機能不足?
かといって、「デザインCAEは機能不足だ」と決めつけるのも早計です。確かに、ハイエンドCAE製品であれば非線形も動解析も解くことができます。しかし代わりに失ってしまうのが「スピード」です。非線形解析はより難しい現象を解くことができますが、計算時間が線形解析の何倍もかかってしまいます。
また線形解析は条件がきちんと入力されていれば計算は大概流れますが、非線形解析の場合は変形の大きさ、現象の複雑さなどにより、経験、技術力がないと計算が最後まで終了しないこともままあります。
操作性の良さも、デザインCAEのメリットと言えます。3次元CADと同様のインタフェース上で操作できるため、解析専任者でなくても抵抗なく利用することができ、設計者がアイデアをその場で何度も検証することが可能です。
CAEを導入する際はその目的を明確にすることが大事になります。開発のスピードを上げるため、設計の上流で短時間に何ケースも流したいのか、あるいは最終確認で時間をかけても複雑な現象を精度よく解きたいのか、それにより選定するソフトも変われば利用者も変わってくるのです。
デザインCAEを効果的に使うには
上記以外にもCAEの世界は「精度」と「スピード」のトレードオフが存在します。例えば、メッシュサイズもそのうちの1つになります。メッシュサイズを粗くすると精度は悪くなりますが、計算スピードは上がります。逆にメッシュサイズを細かくすると精度はよくなりますが、計算スピードは遅くなります。その両者のバランスを取って、最適なメッシュサイズを決めることが上手に活用するためのコツ(ノウハウ)になります。
このように、「精度」と「スピード」のバランスを取ることで、デザインCAEの効果を最大限に発揮できることがお分かりいただけましたでしょうか?
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