フォード採用の車載オーディオバス「A2B」、国内自動車メーカーも評価中:車載半導体
アナログ・デバイセズが、独自開発した車載オーディオバス「A2B(Automotive Audio Bus)」をアピール。フォードの採用をてこに、国内自動車メーカーへの提案を強化する。
アナログ・デバイセズは2016年2月17日、東京都内で開催した2016年度事業戦略説明会において、同社が独自に開発した車載オーディオバス規格「A2B(Automotive Audio Bus)」についてアピールした。
現在、カーナビゲーションシステムやカーオーディオの音声信号を車載スピーカーに伝達する手法は大まかに分けて2つある。1つは、複数本のワイヤーハーネスを使ってアナログ信号をそのまま伝える手法だ。もう1つは、MOSTなどの車載LAN規格に対応したマイコンとトランシーバでデジタル信号として伝える手法である。
A2Bは、音声信号をデジタル信号として取り扱える一方でマイコンが不要だ。使用するワイヤーハーネスは、UTP(シールドなしツイストペアケーブル)1本だけでよく、音声信号をアナログ信号で伝達する場合のように複数本使う必要はない。音声信号を伝達する際に重視されるレイテンシ(遅延時間)も40μsと短い。
さらに、信号伝達のためのUTPを使って最大300mAまでの電流供給も行える。300mAではアンプやスピーカーは動作させられないが、A2Bで扱うことを想定している音声の入力ソースとなるマイクロフォンを動作させるのには十分だ。
会見に登壇したアナログ・デバイセズ社長の馬渡修氏は「Ford Motor(フォード)が2016年から生産する車両にA2Bが採用された。自動車業界のサプライチェーンの中で、半導体メーカーはティア1サプライヤに提案するのが一般的だが、今回のA2Bについては、フォードに直接提案することで採用が決まった」と語る。そしてこの実績を基に国内自動車メーカーへの提案活動を強化しており、既に評価を行っている企業もある。
カーオーディオの音声信号伝達では、ドイツを中心とする欧州の自動車メーカーがMOSTを広く採用している。ただし国内自動車メーカーについては、トヨタ自動車が一部車種でMOSTを採用しているものの、アナログ信号による音声信号の伝達を続けている企業も多い。「A2Bにとって国内市場には大きなチャンスがある」(アナログ・デバイセズで車載製品の責任者を務める永井詢也氏)という。
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