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いまさら聞けない 車載ネットワーク入門カーエレクトロニクス技術解説(1/3 ページ)

ますます高度化するカーエレクトロニクス。その土台を支える車載ネットワークも用途に応じて多くの仕様に細分化されている

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車載システムとネットワーク

 現在の自動車には、「ECU(Electronic Control Unit)」と呼ぶ自動車制御用コンピュータが多数搭載されており(注1)、さまざまな機能を実現しています。

 ECUはマイクロプロセッサと周辺装置(入出力機器など)、通信モジュールにより構成されています。当初は、ユニット単体での制御品質を上げる目的で利用されていました。その後、徐々にECU間での情報共有が進み、複数のECUが協調して1つあるいは複数の機能を実現するようになりました。ECU同士が協調して共通の機能を実現するには、何らかの情報交換手段を必要とします。この情報交換のために利用される通信を「車載ネットワーク」と呼んでいます。


※注1:
トヨタ自動車が2006年9月19日に発表したレクサスLS460には、ECUが約100個搭載されているとされている。


 現世代の車載ネットワークの代表例としては、「CAN」と「LIN」が挙げられます。さらに、次世代の車両で利用が検討されている「X-by-wireシステム」(注2)では、「FlexRay」の利用が最有力となっています。

※注2:
機械による物理的な接続ではなく、通信により制御するシステム。例えば、ハンドルとタイヤをステアリングシャフトでつないでタイヤを動かす代わりに、センサで検知したハンドルの角度情報をステアリング制御用のECUに伝えてモータでタイヤを動かすなど。


 名古屋大学大学院 情報科学研究科教授の高田広章氏は、車載ネットワークの発展を「“0+3段階”でとらえることができる」と発言されています(表1)。

車載ネットワークの発展段階
表1 車載ネットワークの発展段階
※コラム:ECU、車載ネットワークを利用するわけ
なぜECUやネットワークを利用するのでしょうか? 自動車の基本機能である“走る・曲がる・止まる”を実現する“だけ”であれば、ECUやネットワークを利用しなくても自動車は造れると思います。しかし、利用者が求める「より高度な安全性、利便性、環境性能」などを考えると、コンピュータによる支援や各ECUの協調制御が必要になります。
ほとんどの自動車には、電動パワーウィンドウ機能が装備されています。この機能を実現するには、最低限、モータ、スイッチ、リレー回路が必要であることは想像できると思います。実際、上記の部品にあと少し部品を加えることで、この機能は実現できます。しかし、現在の自動車に搭載されている電動パワーウィンドウはコンピュータ(ECU)により制御されています。理由は、利用者の安全を担保するためです。例えば、後部座席で子供が窓を開け、手を出しているとします。前部座席から後方を確認せずに窓を閉めたらどうなるでしょう? 子供は手を挟まれてしまうでしょう。
コンピュータを利用すれば、異物を挟み込んだことを自動的に検出し、窓を開けて安全を担保します。また、最近の高価な自動車ではパワーウィンドウとエアコンが協調し、窓が開いていることをエアコンが認識して制御しているとも聞いています。


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