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「うちも第4次産業革命をやれ」という指示は、既に本質を外している製造業IoT(2/3 ページ)

第4次産業革命とした大きな変革の波が訪れる中、日本企業にはどういう取り組みが求められるだろうか。ロボット革命イニシアティブ協議会では国際シンポジウムを開催。その中で「第4次産業革命」をテーマとした、日本の経済産業省 製造産業局長の糟谷敏秀氏と、ドイツの経済エネルギー省の総合産業政策部門のディレクターであるヴォルフガング・シェレメ氏の講演の内容をお伝えする。

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インダストリー4.0で生産性は30%向上する

 講演に立ったドイツの経済エネルギー省の産業政策部門のディレクターであるヴォルフガング・シェレメ(Wolfgang Scheremet)氏は「インダストリー4.0とは産業のデジタル化である」と述べる。

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ドイツの経済エネルギー省の総合産業政策部門のディレクターであるヴォルフガング・シェレメ氏

 「それぞれの機械が通信し、機械同士がコミュニケーションを行うようになる。分散制御型の産業システムとなり、データ解析技術や人工知能の活用により、機械が自律的に最適な判断を下して作業を行えるようになる」(シェレメ氏)

 また、これらの変革によってドイツ連邦政府では「大きな成長が生まれると考えている」とシェレメ氏は強調。ドイツ連邦政府では、インダストリー4.0によって、ドイツ製造業そのものが国際的な競争力を持つことを目指す一方で、これらの積み上げたノウハウを輸出するという、両面戦略をとっている。これらにより、経済における生産性が約30%向上し、コストは2.5%削減できるという調査結果をシェレメ氏は紹介する。

 そもそもドイツがこうした取り組みを進めた理由には、社会問題に対する危機感がある。シェレメ氏は「日本とドイツは非常に似ている。工業立国であり、非常に優れた技術資産を保有している。一方で、高齢化による労働人口の減少などがあり、産業そのものの効率化が避けて通れない状況だ」と述べている。

インダストリー4.0のアーキテクチャ

 インダストリー4.0はもともとドイツのハイテク戦略2020の中でコンセプトとして生まれ、その後2013年に提言書が提出され具体的な活動が始まった。2015年4月には「実践戦略」が発表されている※)。その中で大きな注目を集めたのが「Reference Architecture Model Industrie 4.0(RAMI4.0)」だ。

※)関連記事:インダストリー4.0がいよいよ具体化、ドイツで「実践戦略」が公開

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インダストリー4.0 リファレンスアーキテクチャモデル(RAMI 4.0)3次元の立体的なモデルとして定義されている 出典:インダストリー4.0実践戦略

 インダストリー4.0で示されているような、さまざまなものが連携し情報をやりとりするような仕組みは、技術をすり合わせるだけでは全体像が見えない。そのため、バリューチェーン全体を捉えた構造モデルを用意し、現実化に向けたさまざまな議論を進めるベースとすることが必要である。シェレミ氏は「RAMI4.0をベースにさまざまな課題の解決を図り、ロードマップを進行させていく」と述べている。既にユースケースとしての成功モデルなども200以上用意されており、これらの提案を進めていく。

「中小企業の半分は製造のデジタル化ができていない」

 ただ、ドイツでもインダストリー4.0の実現に向けた取り組みは多くの課題を抱えており、明確な正解の形が見えているわけではない。

 まず技術的な課題としてあるのが、データインフラの問題だ。IoTにより得られるデータの量は膨大なものとなっている。「コミュニケーションの質が変容する中で、新たなデータインフラの在り方を考えていかなければならない。規格や標準化の問題がある他、セキュリティや安全性などの問題もある」と述べている。

 一方で制度や意識面は、人の能力や働き方の問題が挙げられる。「インダストリー4.0では機械が行える仕事の範囲が広がり、人の新たな働き方を考える必要が出てくる。これらを解決するためには、教育や雇用制度などにも踏み込んでいかなければならない。インダストリー4.0というとすぐにロボットやIoT技術などの話になるが、最も重要なのは人だ。人の存在を忘れては駄目だ」とシェレミ氏は述べている。

 IoTやインダストリー4.0に対して大きな投資をすることが難しい中小企業の問題についても実情は日本と変わらないようだ。「中堅・中小企業の50%はデジタル化に取り組めていないとしており『知らない』という企業も多く存在する。開発力や資金力のない中堅・中小企業については政府などで支援する仕組みが必要だと考えている」とシェレミ氏は述べている。

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