自走するプロジェクターは家電か、それともロボットか?――Cerevo岩佐氏に聞く:ロボットキーマンを訪ねて(3/4 ページ)
家電とロボットの境界をどう捉え、新しい製品をどう投入していくか。ロボットの市場を“ホーム”に拡大していく鍵はそのあたりにありそうだ。
「人を怠惰にする情報表示機器」がある未来の生活
岩佐氏がTipronで提示するのは、いよいよ情報過多になる未来の人間の生活だ。その中でTipronを“究極に怠惰な情報表示機器”と捉えている。
インターネットに情報があふれ、IoTの進行でそれらがさまざまなデバイスからさまざまな形で出力されることになる。さらに、いままでデータ化されていなかった情報がデジタルに乗ってくる。私たちは今後、膨大な情報にさらされることになる。
そうしたとき、人間が自ら情報をPullで取り出すのではなく、環境側から情報がPushされるようになる(必要ならその情報を取得するし、いらないとすればフリックしてしまえばいい)。いずれやって来る、そんな世界に到達するための第一歩として、情報表示機器、ホームプロジェクションロボットを考えたのだ。
岩佐氏 SF映画で勝手に目の前に情報が出てくるシーンがよくありますが、ヒトはああいう世界を望んでいるんだろうと思うのです。それを実装する方法として、直近で現実的、かつコスト的に可能なのは、プロジェクターがそこいら中を走り回って情報を表示してくれるという形だろうと。
ぼーっとご飯を食べているだけなんですが、テーブルに何か情報が表示される。朝、目が覚めたら、ベッドの天井に情報が出てくる。何も操作することなく、指示をすることもなく、勝手に情報が流れ込んでくる。そんな世界が作りたいなというのが、開発のきっかけです。
ホームプロジェクションロボットとして作る込む際、“家庭に入れる”ことを最大限に考慮している。デモムービーとして変形シーンが公開されているが、「起動して、投影するためにヘッドを上げる」という一連の動作は非常にロボっぽい。これは、ホームロボットとして認知してもらうためのこだわりなのと同時に、この機構で既存のホームロボットの課題を解消するという意図によるものだ。
例えばPepperのようなヒューマノイドロボットが自宅にいるとき、カメラやマイクを全部オフにしていたとしても、その前で着替えられるだろうか。どうしても“人”に見えてしまって、抵抗感が残る。人に似せることを目指しているヒューマノイド型の存在感、人として見えてしまうことの1つの作用なのだが。
今回、Tipronはプロジェクションをするという関係上、顔のような意匠がどうしても付いてしまう。実際にカメラで見ているわけではないが、やはりPepperと同じように「こちらを見ている」という印象を与えてしまう。そのため、使わないときはロボットでいう“寝ている動作”に近いものを組み込みたいというのが最初にあったという。
より高い位置からのほうがきれいに投影することができるので、高さは欲しい。存在感を消しつつ、頭を上に持っていってプロジェクションできるというスペックを創造的に入れていくと、答えは変形機構だったのだ。
もちろん、安全性の問題もあった。背の高いロボットがその状態で移動するのは不安定なので、土台は重くすることになる。すると、持ち運ぶには重いし、倒れてきて子どもにあたると危険だ。そのあたりも変形機構を入れることでクリアしている。
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