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自走するプロジェクターは家電か、それともロボットか?――Cerevo岩佐氏に聞くロボットキーマンを訪ねて(4/4 ページ)

家電とロボットの境界をどう捉え、新しい製品をどう投入していくか。ロボットの市場を“ホーム”に拡大していく鍵はそのあたりにありそうだ。

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アイデアからプロトタイプ、量産まで

 通常、Cerevoの製品はアイデアから発売まで、平均して約10カ月だという。一方、このTipronは1年から1年半と、ちょっと長めのプロジェクトになっている。

岩佐氏 Tipronについては社内からのアイデアがベースになっています。もとのアイデアは「机の上を走り回るプロジェクター」でした。机に座ると、小さなプロジェクターが走ってきて、デスクに投影してくれるものだったんですが、それじゃちょっとよさが分かりにくいかなと。5倍くらい大きくして家中走り回るようにして、壁にも投影できるのがいいんじゃないかってアイデアに変えて。これは、もう、その場で。

 大体、僕らは最初にかなりの精度で何を作るか決めちゃうんですね。これくらいの大きさでこんな性能が出て、こういうものにしよう、と。細かいところ、例えば充電式電池にするのか、乾電池にするのかとか、丸い形か四角い形か、決めきれないくらいの状態で。Tipronの場合、プロジェクションする、自走する、大きさは掃除機がちょっと大きくなったくらい、というところまで決めるのに1〜2週間程度。そこから、実際にプロトタイプを作ってCESに持っていくまでに9カ月、10カ月くらいかかっています。僕らのプロジェクトの中では長いほうです。

Tipronは構想に1〜2週間、プロトタイプの完成まで9〜10カ月程度の時間を有している
Tipronは構想に1〜2週間、プロトタイプの完成まで9〜10カ月程度の時間を有している

 岩佐氏は自身をエンジニアではなく、「技術に明るい商品企画の人間」だという。アイデアに対して何の技術が必要で、いまの技術で実装しようとするとどのくらいの完成度でできるのかというのをある程度読めるのが強みだ。

岩佐氏 ユーザーが欲しいかなと思えるものを、買ってもらえるかなというタイミングで出す。そこはすごく大事だなと思っています。Tipronにしてもこれが、ゆっくり開発して完成が3年後でしたというと、ホームロボットって一過性の祭だったよねと言われた後かもしれない。あるいはサービスロボットが大きなマーケットになりすぎて、僕らのような規模の企業では参入が難しくなっているかもしれない。

 また、どれだけ面白く見せられるかどうかが勝負ともいう。

岩佐氏 僕らはこんな未来を定義してみたよ、みなさん、面白いと思いませんか? と。マーケットがあるかないかのカケというより、みんなでマーケットをこれから作りましょうみたいなアプローチが多いですね。

 最後にTipronの量産について伺った。今回、EMS大手のFoxconnで生産するという。生産台数もある程度大規模に、グローバルな展開を目指すのだろうか。

岩佐氏 基本、僕らの生産スタイルは多品種で少量生産を何度も繰り返してという形なので、取りあえず4桁の台数からスタートして。市場がどんな反応を示すかを見ながら、です。そこまで台数をまとめない予定で、4桁の生産を繰り返していく形になると思います。

 背景には、FoxconnなどメガEMSと呼ばれるプレイヤーの変化がある。将来的に大きなビジネスになり得るベンチャースタートアップといわれる人たちに対し、オファー、あるいは積極的な投資をしようという流れになってきているという。

岩佐氏 大手EMSの姿勢もここ2年くらいで変わってきています。口を開けて待っていてもなかなかいい案件が来ない、世の中全体が少品種大量生産から多品種少量生産へ、大きな流れとしてシフトしています。そこは、彼らは我々よりも敏感に嗅ぎとっています。

 次のGoPro、次のFitbitを誰が生むというより、シード投資、アーリー投資をかけて囲い込んでおいて、彼らがメガメーカーになったときにそこの生産を一手に握ろう、という流れになっているのだと思います。

 ホームプロジェクションロボット「Tipron」は、2016年夏の発売(日本、海外含めて)を目指し、現在、性能アップや調整等を進めている。価格帯は10万〜20万円の予定だ。

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