最高業績更新のトヨタ、販売好調の北米で減益の“怪”:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
トヨタ自動車は2016年3月期(2015年度)第3四半期(4〜12月)の連結決算について説明した。売上高は前年同期比6.5%増の21兆4313億円、営業利益が同9.0%増の2兆3056億円、当期純利益は同9.2%増の1兆8860億円だった。連結販売台数は北米市場で増加したが、日本/欧州/アジアなどで前年同期を下回った。
売れるのに稼げない北米市場
2015年4〜12月期でみると、日本は「シエンタ」や「アルファード/ヴェルファイア」など新モデルがけん引して増益を確保した。2015年12月発売の新型「プリウス」も月販目標の8倍となる10万台を受注している。しかし、自動車市場の低迷や研究開発費や減価償却費の増加によって2015年10〜12月期から減益基調になっている。
一方、欧州と北米の2015年4〜12月期は前年度比で営業利益が減少している。欧州は、西欧で「オーリス」「ヤリス」が販売をけん引したものの、ロシアでの販売減少が響き減益となった。
北米は、販売台数が伸長した半面、営業利益が減少した。これは「鮮度が落ちたモデルや販売減少が激しい市場の台数を支えるために費用が伴った」(大竹氏)のが原因だ。「カムリ」「シエナ」の販売インセンティブが利益を圧迫した。販売台数は「RAV4」「レクサスNX」「4ランナー」などSUVが押し上げている。ピックアップトラックやSUVは米国市場の6割を占めるほど需要が拡大しており、「稼働率の改善や稼働体系の見直し、能力増強や日本からの輸出で対応していく方針」(同氏)だ。
また、北米で若年層向けに展開してきたサイオンブランドの廃止については、「当初の目的である若年層への販売強化を達成できたと判断した」(同氏)と理由を説明。サイオンブランドは2003年に立ち上げ、現在までに100万台を売り上げた。サイオンブランドの顧客のうち、70%が新規顧客で、顧客の半数以上を35歳以下が占める。サイオンブランドは2016年8月からトヨタブランドに移行する予定。
2016年3月期通期の業績見通しに関しては、売上高と営業利益は据え置き、当期純利益は200億円増の2兆2700億円に引き上げた。この見通しには、2016年2月8〜13日に予定している国内の完成車組み立てラインの稼働停止による影響は織り込んでいない。期末の連結販売台数への影響や、代替部品の輸送に伴う物流費などを現状では算出できないという。
この稼働停止は、2016年1月8日に愛知製鋼の知多工場(愛知県東海市)で発生した事故によるもの。「他の鉄鋼メーカーへの生産委託や、愛知製鋼の代替ラインによる生産で手を尽くしてきたが、非常時には問題解決に集中して取り組む方が、クルマの品質に重要だと判断した」(同氏)。
また、2016年3月期の設備投資はTNGA(Toyota New Global Architecture)への投資を前倒ししたため、2015年4〜9月期の見通しより200億円積み増して8800億円となる計画だ。
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