揺れるシャープ再建、ホンハイか産業革新機構か、決め手は「液晶以外」:製造マネジメントニュース(4/4 ページ)
シャープは2015年3月期(2015年度)第3四半期の決算と併せて経営再建に向けての取り組みの進捗状況を説明した。シャープが出資を受け入れる企業として、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と日本の産業革新機構の2社に絞ったことは認めたが「どちらかに優先交渉権を与えたという事実はない」(シャープ 代表取締役社長 高橋興三氏)とした。
産業革新機構と組む可能性
それでは産業革新機構と組む可能性はどうだろうか。官民ファンドの産業革新機構はもともとは液晶ディスプレイ事業の再編に強い価値を感じており、傘下であるジャパンディスプレイ(JDI)にシャープの液晶ディスプレイ事業を合流させることを考えていたとされる。一方で、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電事業についても、東芝など他の日本企業と合流させようとしていたという。
こうしたことを見ると、高橋氏が強調した「シャープのDNAを守る」という点から、産業革新機構の意向は合わないように見える。しかし、高橋氏は「産業革新機構からも白物事業の切り離しについての話はない」としており、白物家電を分割して再編する点については、産業革新機構は再建プランに入れていないようだ。
高橋氏は「液晶ディスプレイ事業については将来的には他社との合流も視野に入れている」としており、ジャパンディスプレイとの統合については飲む考えのようだ。一方で、産業革新機構が白物家電の分離案を取り下げて、シャープが要望する「液晶以外の分野の一体経営」を飲んだとするならば、シャープにとっては産業革新機構の提案を断る理由はなくなる。また、鴻海精密工業との間に存在する技術の海外流出の問題も抑えられる。そのため「液晶以外」の領域に対する十分な出資と再建案、そして回収見込みなどが立つのであれば、産業革新機構がシャープの再建相手に選ばれることは十分あり得るだろう。
いずれにせよ、液晶事業の構造改革は待ったなしの状況で、鴻海精密工業と産業革新機構のどちらの場合でも、他の企業との合流など抜本的な解決策が必要な状況だ。しかし、液晶以外の事業は、今回の2015年度第3四半期決算をみても「赤字の事業もあるが先行投資ができない中でも多くの事業が黒字を維持しており、潜在的な力はある」(高橋氏)としている。最終的には、この液晶事業以外の部分をどう生かし、成長させるかというプランに鴻海精密工業と産業革新機構を選ぶ基準が移っているといえるだろう。
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