裏面照射を置き換える? パナソニックが有機薄膜とAPDのCMOSセンサーを発表:車載半導体(4/4 ページ)
パナソニックは、半導体技術の国際学会「ISSCC2016」で3つのCMOSセンサー技術を発表した。従来のCMOSセンサーに用いられているフォトダイオードを、有機薄膜やアバランシェフォトダイオード(APD)に置き換えることによって感度やダイナミックレンジを向上する技術になる。
アバランシェフォトダイオードで光電子を1万倍に増倍
今回は、有機薄膜センサーの他に、受光部のフォトダイオードにAPDを導入したAPD-CMOSセンサーも発表している。こちらの開発は、パナソニックのオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社が担当した。
従来のCMOSセンサーでは、光電変換によって生成される光電子は、撮像時の明るさに比例する。暗い場所では発生する光電子が少ないので、ノイズレベルに近くなって鮮明な撮像ができなかった。そこで、光電変換で生成された光電子を増倍させるために、微弱な光(少ない光子量)から大きな電気信号を取り出せるAPDを設け、増倍された多量の光電子を蓄積領域に蓄積できるようにした。APDの導入により、暗い場所の少量の光電子を1万倍に増倍できる。APDによる光電子の増倍は、カラーフィルタを透過した色情報を持つ光電子にも適用されるため、APD-CMOSセンサーであれば暗い場所でも高感度で撮像可能だ。パナソニックでは、星明かり程度の照度(0.01ルクス)で、高感度のカラー撮像を確認している。
また、APDへの印加電圧を制御すれば、光電子の増倍を制御できる。明るい場所では光電子をそのまま、暗い場所では光電子を1万倍に増倍して出力することができ、さらには明るさに応じて感度を可変して、星明かりと街灯が混在する明暗差の大きいシーンの鮮明な撮像も可能になる。
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