複雑化が進むモノづくり、他社の効率化事例がオープンアーキテクチャに?:ものづくり支援ソフトウェア製品レポート(2/2 ページ)
ソフトウェアそのものは無償で提供するという、サブスクリプション型ビジネスモデルで導入数を伸ばしている米国のPLMベンダーAras。同社では2016年より、パートナー企業での成功事例をベースに開発した一種の“テンプレート”を製品の機能として順次提供していく方針だ。
実践事例をベースにしたアプリケーションを提供
具体的にはGE、Airbus、日産自動車などのパートナー企業におけるAras Innovatorのさまざまなユースケースを、アプリケーション化して他企業にも使えるかたちで本格的に提供していく計画だという。
「例えば日産自動車ではMBSE(モデルベースシステムエンジニアリング)における情報管理システム、Airbusでは設計・製造連携における情報管理などにおいてAras Innovatorを活用している。もちろん、各社が取り組んでいる内容をそのままアプリケーション化するわけではない。契約を結んだ上で、他企業のビジネスプロセスの改善に活用できる普遍的なユースケースの部分をアプリケーション化している。2016年はこうした実践をベースに開発したアプリケーションを、順次投入していく計画だ」(久次氏)
Arasでは既にこうした“実践ベース”のアプリケーションモジュールの1つとして、2015年12月に「Aras Technical Documentation」を発表している。これはAras InnovatorのPLMプラットフォーム上のデータを直接使用してカタログやメンテナンスマニュアルなどを作成できるツールだ。設計変更などが起きた場合でも、PLMでリビジョン管理されたデータを参照することで、常に最新の情報を反映することができる。
このAras Technical Documentationは、スウェーデンのOrio(旧Saab Automobile Parts)での事例をベースに共同開発を行ったものだという。Arasは2015年末にAras Innovatorのバージョン11のマイナーアップグレード版「Aras Innovator 11.0 SP5」を公開した。これらのアプリケーション・モジュールは、この最新バージョンで利用できるという。
「Aras Innovator 11.0 SP5はこれらのコアモジュールを含んだバージョンになっている。マイナーアップグレードという扱いだが、本来ならばバージョン12と呼んでもよいもの。さらにオープンに公開しており、Arasとサブスクリプション契約を結んでいない企業でも利用を始めることが可能だ。こうした実践ベースのアプリケーションを、サブスクライバー(契約企業)以外にも広く提供していく」(久次氏)。
なお、今後のスケジュールとしては2016年第2四半期をめどに、製造工程計画と品質管理の効率化に貢献するアプリケーションをリリースする計画で、その他のアプリケーションについても順次拡充していくという。
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