モデリングを成功させるために――持続可能なモデリングを目指して:プロジェクトを成功させるモデリングの極意(6)(8/9 ページ)
今回はモデリングで失敗しないだけでなく、さらにモデリングを成功させ、継続するための方法を探ります。失敗しないコツが盾であるならば、成功と持続のコツは矛に相当しますので、これらを学んでモデリングを持続可能(sustainable)なものとしていきましょう。
モデラーの育成とモデリング文化
モデリングを成功させるために、モデラーの育成が重要です。UMLやSysMLを表面的に描けるようにする程度の育成は比較的容易ですが、「プロジェクトを成功に導くモデリングができるモデラー」の育成は容易ではありません。
中級以上のモデリングでは、プログラムコードよりも思想が入ってきます。このモデル図では何を目的にし、何を描き、何を捨てて、どう見やすくして、何を強調して伝えたいのかなどを、中級以上のモデラーはモデリングで行います。
この中級以上のモデラーを育成する方法としては、(1)メンター(または師匠、親方)による個人指導、(2)計画的な OJTなどがありますが、一般的には育成は難しいものです。
効果的な育成方法がないので、育成そのものよりも育成のための環境整備が重要になります。つまりモデラーの育成として有効な施策としては、(3)育成環境の整備と、そのベースとなる(4)モデリング文化の醸成があります。図9にモデリングの育成の方法や施策を示します。
育成する環境整備が重要
モデラー候補を選抜し、候補者に時間と機会を与えることができる環境の整備が必要です。候補者にモデリングを学び、また実際にモデリングをさせ、作成したモデル図を評価し、さらに改良していくというサイクルを通じて、育成していきます。その環境整備こそがモデラーの育成に必要です。
このためには、指導者も必要であり、評価者も必要であり、モデリングをする仕事も必要です。そこで組織におけるモデリング文化の醸成が必要になってきます。
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