松村礼央氏に聞く「物語を再生する"装置"」としてのロボット、多脚ロボット研究開発プラットフォームの構想:ロボットキーマンを訪ねて(2/5 ページ)
コミュニケーションロボットの社会実装を考えたとき、一体、何が必要となるのだろうか。人と、人ではない機械とのコミュニケーションの形を探る。
物語を再生する“装置”としてのロボット
松村氏 まず私個人の仮説として、コミュニケーションロボットに求められているリウォードは【日常において恒常的に人と機械との関係性をつむぐ機能】と考えています。シンプルにいえば【物語(ストーリー)をつむぐ機能】といえると思います。ただ、現状でそのような機能をロボットに実装することは厳しいでしょう。
そこでいま、私が考えているのは、ユーザーと機械との間の物語をあらかじめ用意し、それを利用することで【物語を再生する装置】としてのロボットを作り、物語を消費するための環境も作る。ユーザーは、その環境とロボットの中に入ることで自身の望む物語を消費し、それをリウォードとする、というものです。
ここでの物語の元となるコンテンツとしては、アニメ、映画そして舞台演劇を想定しているという。では、そのような物語で描かれているロボットならいますぐ作れるのか、というと、なかなか難しい。
大抵、そこで描かれるロボットは、人と同程度に聞いたり、見たりして周囲を認識し、行動を選択し、何らかの出力をする。しかし、いまロボットに実装可能な機構でリアルタイムに全部それらを処理するというのはかなり無理がある。
ロボット単体では技術的に難しいとなると、それ以外のやり方を考えることになる(例えば、環境の側にセンサーを埋め込むとか)。しかし、社会全体で実装できるかというと、それも困難だ。
松村氏 まずは現状の物理的、技術的な限界を踏まえた上で【どのような物語を利用するか】を考え、次に【物語の実装に、どこで、どのような環境が必要なのか】そして最後に【その環境の中でロボット、そして人すらも、いかにして制御するか】という問題を解かなくてはいけない。必要なら新しい技術の開発への投資も必要でしょう。
これらの問題を解いて、ユーザーに対してリウォードに足る物語を提示できるかというのが、私の中での直近で一番の課題です。例えばSTAR WARSのBB-8の製品展開のプロセスなどが、私が目指す社会実装のプロセスに近いと考えています。
いま松村氏が検討しているのは、物語のある制御された環境を用意したうえで、その中で、物語を再生する“演者”としてロボットを動かし、人すらも制御するという形だ。
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