デトロイトショーで目立つ「売らんがため」の現実主義、「クルマの未来」姿なく:2016 CES&デトロイトモーターショー2016レポート(後編)(4/4 ページ)
自動車業界の今後の方向性が示される「2016 International CES」と「デロイトモータショー2016」を取材した桃田健史氏によるレポートの後編をお送りする。久々に盛り上がりデトロイトモーターショーだが、桃田氏は、「規制対応と売らんがための現実主義が強く、かつてのように『クルマの未来』は示されていない」と指摘する。
先行きが不透明な「プラトー」状態への回答は?
デトロイトショーの開幕前に発表された米国市場の2015年全体需要は、過去最高の1750万台を突破したという。サブプライムローンが社会問題となり、その後にリーマンショックを食らった2009年の1000万台割れギリギリのラインから、徐々に回復してやっとここまでたどり着いたのだ。
こうした好景気なのだから、デトロイトショーの場内も、さぞかし「華やかな雰囲気が一杯!」と思いきや、前述のような「レギュレーションマッチング」の次世代車や、「売らんがため」のライトトラック/SUVと高級車が目立つだけで、来場者がワクワクドキドキするような「華やかさ」を感じることはできない。
時計の針を少し戻せば、リーマンショック前の2000年代前半から中盤は、“ビッグ3”と呼ばれていたGM、フォード、Chrysler(クライスラー、当時)が競い合って、ド派手な演出で新車やコンセプトモデルの発表を行っていた。報道陣向けには、大型のモデルカーや衣料品などのお土産をばらまいていた。その背景には、ピックアップトラックとSUVで構成される“ライトトラック”部門の売り上げが急増していたことがある。デトロイトショーの現状は、そうした過去の“バカ騒ぎ”に対する反省があるのだろうか。
デトロイトショーの報道陣向け公開日の2日目午後、ショー会場であるコボセンターのほど近く、GM本社があるルネッサンスセンター内では、米国大手メディアのAutomotive News(オートモーティブ・ニュース)による毎年恒例のカンファレンスが開催された。
そこでは、Google(グーグル)の自動運転車向けとして新設された企業のCEOや、大手ティア1サプライヤであるカナダのMagna International(マグナ)のCEOらの講演が続いた。その中で最も印象深かったのが、全米最大のカーディーラーチェーンを展開するAutoNation(オートネーション)のCEOであるマイク・ジャクソン氏の言葉だ。
「2015年の全需、1750万台は何んとも素晴らしい数字だ。だが、皆さんも既にお感じになっているように、2015年後半から市場の様子が変わってきた。2016年は明らかに、プラトー(plateau、台地)のような状況になるだろう。そうした中、自動車メーカー各社がどのような戦略を練るのだろうか? 私はまだ、各社から明確な回答をもらっていない」(ジャクソン氏)。
2016年11月には大統領選挙が行なわれる米国。8年ぶりに新しい大統領執行部となる中で、“プラトー”状態の米国自動車市場に対して、新たなる施策が講じられるのだろうか。
なお、デトロイトショー開催期間の後半、米国大統領のバラク・オバマ氏は、自身として初めてデトロイトショーの現場を視察している。
筆者プロフィール
桃田 健史(ももた けんじ)
自動車産業ジャーナリスト。1962年東京生まれ。欧米先進国、新興国など世界各地で取材活動を行う。日経BP社、ダイヤモンド社などで自動車産業、自動車技術についての連載記事、自動車関連媒体で各種連載記事を執筆。またインディカーなどのレース参戦経験を基に日本テレビなどで自動車レース番組の解説も行う。
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