デトロイトショーで目立つ「売らんがため」の現実主義、「クルマの未来」姿なく:2016 CES&デトロイトモーターショー2016レポート(後編)(3/4 ページ)
自動車業界の今後の方向性が示される「2016 International CES」と「デロイトモータショー2016」を取材した桃田健史氏によるレポートの後編をお送りする。久々に盛り上がりデトロイトモーターショーだが、桃田氏は、「規制対応と売らんがための現実主義が強く、かつてのように『クルマの未来』は示されていない」と指摘する。
日系ビッグ3にも目立つ「売らんがため」の現実主義
CAFEとZEVという「厳しい現実」が目立つ、デトロイトショーの会場内。この他のトレンドとしては、北米市場らしくライトトラックとプレミアムブランドの存在がある。
そうしたトレンドを、日系ビッグ3である、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダも追っている。
日産自動車はフルサイズピックアップトラック「タイタン」に、上級仕様の「ウォリアーコンセプト」を発表。デザイン担当者は「Ford Motor(フォード)『F150』の『ラプター』に見られるように、このセグメントの顧客は、ピックアップトラックに対して、大出力のパワートレイン、サスペンショントラベルを極端に大きくした高度な走破性、さらに高級車のようなインテリア空間を求める」と、今回のコンセプトモデルの企画背景について語った。
ホンダは、ミッドサイズクラスのピックアップトラック「リッジライン」を復活させた。
初代「リッジライン」は、SUT(スポーツユティリティートラック)というセグメントで、SUVのイメージを重んじた設計思想を持っていた。今回登場した新型では、SUTの雰囲気を残しつつ、全体的にはピックアップトラックらしさが強調された印象だ。米国法人であるアメリカンホンダの関係者は、「好景気の中、全米のディーラーからは『ピックアップトラックがないと、他社との競争に勝てない』という声が多く寄せられた。このため、リッジラインをフルモデルチェンジして再投入することになった」と事情を説明した。
トヨタ自動車は、レクサスブランドから2ドアスポーツカーの「LC500」を世界初公開した。発表では、社長の豊田章男氏が登場し、ユーモアを交えたスピーチで会場内を沸かせた。LC500は、2012年のデトロイトショーで発表した、コンセプトモデル「LF-FC」の量産車だ。豊田氏は「(カリフォルニア州)ペブルビーチ(での高級車関連の式典)で、LF-FCに対してメディアにアンケートを行ったが、『トヨタは、コンセプトモデルは良いが、それを量産することが少なくて残念だ。このクルマもそうなるだろう』という声が多かった。そうした声に対して反省し、さらに前進することが大切だと感じた」と量産化に至った経緯を説明した。
また、レクサスのデザイン部門関係者によると、「2017年発売予定のこのLC500から、レクサスのモデルラインアップを刷新する」という。プラットフォームを新規で設計し、最上級車であるLCを切り込み隊長として、「LS」「GS」「IS」などのセダンやクーペへと派生していく。LC500の価格について今回は未発表だったが、ライバルとなるホンダの新型「NSX」が、ベースモデルで1890万円、フルスペックになると2500万円近い高額となるため、LC500も1500〜2000万円クラスになることは間違いない。
これら日系ビッグ3の発表車は、北米市場での即効性(=換金性)に優れた商品であるが、「クルマの未来」を見据えた新たなる提案には思えない。これは日系メーカーだけではなく、欧米韓の各メーカーの出展ブースで感じたことだ。「売らんがため」という意識が強過ぎる印象だ。こうした傾向は、年々大きくなっていると思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.