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中国新エネ車が席巻する、2016年の電気自動車/プラグインハイブリッド車市場和田憲一郎の電動化新時代!(19)(3/3 ページ)

2015年、中国の新エネルギー車(新エネ車)の年間販売台数が22万〜25万台に達した。新エネ車=電気自動車もしくはプラグインハイブリッド車であり、その市場規模は米国を抜きトップに立つ見込み。2016年以降もその成長は加速する勢いで、今後の電気自動車/プラグインハイブリッド車市場は中国が台風の目になりそうだ。

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2016年の新エネ車販売台数は60万台超に

 では、2016年の中国の新エネ車市場はどうなるのだろうか。中国ではいったん普及に拍車が掛かったら、その勢いは加速するというのが筆者の印象である。自動車の普及スピードも、2005年の年間販売台数570万台から、5年後の2010年には1800万台まで急伸している。新エネ車についても、政府は2020年までの新エネ車の累計普及台数で500万台を目指しており、筆者の予測では2016年の販売台数は60万台を超えるものとみている。

 理由は2つある。

 1つは、これまでは中国系企業による模倣型EVが多かったが、連載第16回の「ドイツ自動車メーカーがプラグインハイブリッド車を大量投入し始めた4つの理由」で示したように、いよいよドイツ自動車メーカーが中国においてEV/PHEVの量産体制を整えつつあることが挙げられる。

 これに連動するようにドイツ自動車メーカーにリチウムイオン電池を供給する韓国企業も準備を整えつつある。LG Chemは南京にEV用電池工場を建設し、2016年から稼働に入る。もう一方の雄であるSamsung SDIも、西安にEV用電池工場を2015年に建設し、これも2016年からの本格稼働を目指している。

 もう1つの理由は、補助金の対象となるEVの条件を厳しくしたことだ。具体的には、これまで満充電からの走行距離が80km以上であれば補助金が出ていたが、それを2016年から100km以上に引き上げた。このことは、粗悪なEVでは補助金が得られなくなり、市場からの淘汰を促す。消費者からの満足度を引き上げることも考えてのことであろう。いずれにしても、各自動車メーカーは本格的なEVを目指さなくてはならず、活用領域の広いEVが出現し、市場の活性化が期待される。

離陸する中国の新エネ車、日系メーカーはどう対応する

 中国では、政策と市場の需要、生産体制がマッチした時、爆発的な成長が起こる。商品的にみれば、日本や米国のEV/PHEVと比べて不十分な面もあるかもしれない。しかし、ガソリン車も三輪車もあり、中国製廉価車あり、欧米の高級車ありという世界である。玉石混交でEV/PHEVが著しく普及拡大していくのではないだろうか。

 そして、ここからはあくまで筆者の推測にすぎないが、EV/PHEVの年間販売台数が100万台を超える段階で、大都市部における流入制限、つまりバス/トラックを除き、乗用車はEV/PHEV以外は流入制限もしくは流入禁止などの処置を講ずるのではないだろうか。かつて二輪車が全て電動バイクに置き換わったように、EV/PHEVでも同様のことが起こらないとはいえない。

 なお、日本では中国の景気後退を懸念して、日本企業の設備投資削減や撤退などがよく報道される。決して筆者自身が楽観視しているわけではないが、しばしば中国を訪問する際の印象では、そういった報道に対して違和感を覚えることが多い。例えば、建設途中に不動産会社が倒産し、廃墟となったマンションは報道されているが、その隣に建設中の巨大なショッピングモールについては報道されないことなどである。

 2016年、中国は新エネ車の離陸期を迎えようとしている。それに対して、日系の自動車メーカーや部品メーカーが前進するのか、後退するのかを判断しなければならない重要な岐路になるであろう。いずれにしても、中国が、今後のEV/PHEV市場で世界の台風の目になることは間違いない。

筆者紹介

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和田憲一郎(わだ けんいちろう)

三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。


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