マツダのSKYACTIVターボエンジンは“意味ある”過給ダウンサイジング:エコカー技術(3/3 ページ)
これまでガソリンエンジンの過給ダウンサイジングに否定的だったマツダが、2016年春に北米で発売する新型「CX-9」に、「SKYACTIV-G」で初となるターボエンジンを搭載する。マツダ 常務執行役員の人見光夫氏は「“意味ある”過給ダウンサイジングができる条件がそろったからだ」と理由を説明する。
ダウンサイジングターボを食わず嫌いしていたわけではない
排気量3.7lのV型6気筒エンジンをダウンサイズしたのは、SKYACTIV化すると販売台数に見合わず設備投資が増えるためだ。もし直列の排気量3.7lエンジンがあれば「過給ダウンサイジングではなくSKYACTIVにした」(同氏)という。
人見氏は、過給ダウンサイジングを選んだ理由として「ダイナミック・プレッシャー・ターボやクールドEGR、直列化による機械抵抗の低減という3つの条件がクリアできたからだ。最も合理的なコストで、実用域の走りを向上しながら燃費も大幅に改善できた」と主張する。
同氏は「過給ダウンサイジングを食わず嫌いしていたわけではない」と過去の取り組みを振り返る。
1980年代にターボエンジンがブームになった頃、「ターボエンジンの圧縮比は7〜8で実用燃費はかなり悪かった。どうにか圧縮比を上げられないかと考え、高圧縮比スーパーチャージャーの開発に取り組んだ」(同氏)という。当時、マツダが市場に出したターボエンジンは圧縮比が7.9で、自然吸気でも出せる程度のトルクしか出せなかった。
高圧縮比スーパーチャージャーは、掃気効果でトルクを上げることが可能になった。残留ガスを半減させると圧縮比を2以上高める効果がある。前述のターボエンジンに高圧縮比スーパーチャージャーを組み合わせると、排ガスの温度と過給圧が低いままで、高圧縮比で高いトルクを出せた。また、当時はV型6気筒の排気量3lエンジンを同1.5lにダウンサイジングする試みも検討していた。排気量を半減した結果、燃費は当時の測定基準で21%しか向上しなかった。新開発の排気量2.5lターボエンジンに搭載したクールドEGRも「アイデア自体は数十年前に考案していた」(同氏)ものだ。
人見氏は、「これまでに過給ダウンサイジングに取り組んできた経験があるからこそ、“意味のない”過給ダウンサイジングに対して疑問を示していたのであり、“意味ある”過給ダウンサイジングの条件がそろったからこそ排気量2.5lのSKYACTIVターボエンジンを新開発したのだ」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「SKYACTIV-G」初のダウンサイジングターボ、排気量2.5lで新型「CX-9」に搭載
マツダは、「ロサンゼルスオートショー2015」において3列シート7人乗りのSUV「CX-9」の新モデルを公開した。新開発の排気量2.5l直噴ターボガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.5T」を搭載し、EPAモードで従来比約20%の燃費改善を実現した。2016年春に北米市場から販売を始める。 - SKYACTIVエンジンは“理想の燃焼”に向けた第1ステップ
マツダの「デミオ」や「CX-5」など、次世代技術「SKYACTIV」を採用した新モデルの販売が好調だ。これらの車両の最大の特徴となっているのが、「SKYACTIVエンジン」による良好な燃費や排気ガス性能である。MONOistオートモーティブフォーラムでは、このSKYACTIVエンジンの開発を主導した、同社パワートレイン開発本部 エンジンプログラム主査の仁井内進氏へのインタビューを前後編に分けてお届けする。今回の前編では、SKYACTIVエンジンの開発の根幹を成す“理想の燃焼”に向けた取り組みについて聞いた。 - ダウンサイジング過給の需要増が追い風、三菱重工がターボを年産1000万台体制へ
三菱重工業は、過給機の1つであるターボチャージャーの年間生産能力を現在の1.7倍強に相当する1000万台にまで増やす方針を発表した。これは、「ダウンサイジング過給」を採用した車両開発の広がりにより、ターボチャージャーの需要が急激に高まっているためだ。 - 「SKYACTIVエンジン」は電気自動車と同等のCO2排出量を目指す
好調なマツダを支える柱の1つ「SKYACTIVエンジン」。その開発を主導した同社常務執行役員の人見光夫氏が、サイバネットシステムの設立30周年記念イベントで講演。マツダが業績不振にあえぐ中での開発取り組みの他、今後のSKYACTIVエンジンの開発目標や、燃費規制に対する考え方などについて語った。その講演内容をほぼ全再録する。 - 新型「クラウン」はハイブリッドでダウンサイジング、JC08モード燃費は23.2km/l
トヨタ自動車の新型「クラウン」のハイブリッドモデルは、排気量3.0lのエンジンと同等の動力性能を持ちながら、23.2km/l(リットル)という良好なJC08モード燃費を実現している。これは、「日本市場に最適な、ハイブリッドシステムを用いたエンジンのダウンサイジング手法によるものだ」(同社)という。