ダウンサイジング過給の需要増が追い風、三菱重工がターボを年産1000万台体制へ:エコカー技術
三菱重工業は、過給機の1つであるターボチャージャーの年間生産能力を現在の1.7倍強に相当する1000万台にまで増やす方針を発表した。これは、「ダウンサイジング過給」を採用した車両開発の広がりにより、ターボチャージャーの需要が急激に高まっているためだ。
三菱重工業は2013年8月6日、乗用車用ターボチャージャーの年間生産能力を現在の1.7倍強に相当する1000万台にまで増やす方針を発表した。まず、タイをはじめとする海外生産拠点に総額約110億円の投資を行い、2015年までに年間生産能力を現在の580万台から890万台まで増強。その後2016年までに年産1000万台体制を確立し、早期に乗用車用ターボチャージャーの世界トップシェア達成を目指す考え。
2015年に世界シェア30%へ
ターボチャージャーは、過給機の1つで、エンジンから排気ガスが排出される際のエネルギーを用いて空気を圧縮し、吸気として送り込む機能を持つ。最近では、過給機を使ってエンジンの排気量を減らし、燃費や二酸化炭素排出量を向上する「ダウンサイジング過給」を採用した乗用車の開発が広がっており、それとともにターボチャージャーの需要が急激に高まっている。
乗用車用ターボチャージャー市場では、米国のHoneywellとBorgWarnerがトップグループを走っており、三菱重工業はこれら2社を追う位置に付けている。現在の三菱重工業の世界シェアは21〜22%程度だが、乗用車市場が約3300万台と予想される2016年に年産1000万台体制を確立した場合には約30%まで高められる計算になる。
タイ、中国、北米に生産拠点
今回の110億円の投資は、タイの生産拠点であるMitsubishi Turbocharger Asia、中国の生産・販売拠点である上海菱重増圧器、米国拠点であるMitsubishi Engine North Americaの生産能力増強が主な目的となっている。
Mitsubishi Turbocharger Asiaでは、部品加工ラインや組み立てラインを大幅に増設して、ターボチャージャーの中核部品であるカートリッジの年間生産能力を2015年までに現在の2.5倍強に増強する。
カートリッジは、排気ガスのエネルギーを受けて回転するタービンホイールと吸気を圧縮するコンプレッサーホイール、タービンホイールの回転力をコンプレッサーホイールに伝える動力伝達系を組み合わせた部品である。タイで生産したカートリッジは欧州や中国などの当社最終組み立て拠点に供給することになる。
また、タイに拠点を構える自動車メーカーからの完成品のターボチャージャーの需要も増大しているため、最終組み立てラインの生産能力も、2015年に現在の2倍に増強する計画だ。
上海菱重増圧器は、上海ディーゼル、住友商事との3社合弁会社だったが、三菱重工が住友商事から株式の一部を購入することで、2013年6月に連結子会社化を完了している。この上海菱重増圧器に増資を行い、組み立てラインを順次増強する。ターボチャージャーの年間生産能力は、2015年までに現在の約3倍、2016年には約4倍まで拡大する予定である。
エンジンやターボチャージャーの販売子会社であるMitsubishi Engine North Americaについては、同社の傘下でインディアナ州にターボチャージャーの生産拠点を新設する。2014年秋から、60万台規模の年間生産能力で量産を開始する予定である。その後、北米に生産拠点を持つ自動車メーカーをターゲットに順次増強し、2016年をめどに年間生産能力を2倍に引き上げていく計画だという。
次世代ターボチャージャーの開発も計画
開発面では、欧州の生産拠点であるMitsubishi Turbocharger and Engine Europeを、日本に次ぐ「第二の開発拠点」としての役割を担わせ、顧客への開発サポートを充実させていく。そして、世界最高効率を達成する「新コンセプトターボチャージャー」や、ガソリンエンジンの一層のダウンサイジングに対応した「電動式の二段過給システム(電動2ステージターボチャージャー)」などの次世代ターボチャージャーを開発し、新たな市場を開拓する計画だ。
製造面では、日本を中心とする生産拠点の設備自動化を推進し、日・米・欧・アジア4極のフレキシブルな生産融通体制を実現。これによってコスト競争力の一層の強化を図る。
また、今回の投資により、各大規模市場の近傍でターボチャージャーの組み立てを行えるようになる。これにより、顧客密着型のサポート体制の構築や、市場の多様なニーズへの的確かつ短納期での対応といった、営業面での強化も図れるという。
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