新型「ノート」は「フィット」キラーになるか、燃費は25.2km/lを達成:エコカー技術
日産自動車は、小型ハッチバック車「ノート」を初代モデル以来7年半ぶりに全面改良し、2012年9月に国内市場で発売する。排気量1.2リットルの直噴3気筒ミラーサイクルエンジンに、スーパーチャージャとアイドルストップシステムを組み合わせ、JC08モード燃費で25.2km/lを達成した。
日産自動車は2012年7月16日、小型ハッチバック車「ノート」を、2005年1月に発売した初代モデル以来7年半ぶりに全面改良すると発表した。今回発表した新型ノートは、現行の初代ノートと、高級小型ハッチバック「ティーダ」の両車種をカバーするグローバルコンパクトカーとして、全世界で販売することになる。日産自動車九州(福岡県苅田町)で生産する国内向けモデルの発売日は2012年9月。2013年に発売する欧州市場向けモデルは、英国のサンダーランド工場で生産する予定である。
フィット ハイブリッドと競合
新型ノートは、排気量1.2l(リットル)の直噴3気筒ミラーサイクルエンジン、高効率のルーツタイプスーパーチャージャ、アイドルストップシステムを組み合わせて実現した「HR12DDR(DIG-S)」を搭載する。いわゆるダウンサイジング手法によって効率を高めたエンジンで、HR12DDRを搭載する新型ノートの燃費は、JC08モードで25.2km/lを達成した。その一方で、スーパーチャージャによって、初代ノートが搭載していた排気量1.5lのガソリンエンジンと同等のトルク性能を確保したという。
国内市場で新型ノートと競合するのは、実質的なエンジン排気量が1.5lクラスで、荷室容積が同クラスになるホンダの「フィット」だろう。フィットの中でも、最も燃費が良いハイブリッドモデルの「フィット ハイブリッド」のJC08モード燃費は26.4km/l(関連記事)。新型ノートの燃費はこの数字に及ばない。このため、フィット ハイブリッドの159万円よりも安価な価格設定や、より大きな荷室容積(フィット ハイブリッドは341l)などで対抗する必要がありそうだ。
スーパーチャージャ付きエンジンで燃費を向上
HR12DDRは、燃費を向上するためにさまざまな技術を採用している。エンジンの圧縮比は12.0で、過給機付きのエンジンとしては高い。直噴システムには、6つの噴射口を持つマルチホールインジェクタ、15MPaの高燃圧システム、タンブル(縦渦)ポートを採用し、気筒内に噴射された燃料の気化潜熱で筒内の混合気を冷却できるようにした。エンジンは、吸気バルブの閉じるタイミングを遅くすることで高膨張比を実現するミラーサイクル化を施した。ミラーサイクル化により、スーパーチャージャと組み合わせて動作させる場合のエンジン効率を高められる。ノッキングを抑制するために、ピストンクーリングチャンネルや高熱伝導ピストンリング、ナトリウム封入バルブ、真ちゅうバルブガイドなどを採用して、燃焼室の冷却効果を向上させている。
先述したミラーサイクル化と外部EGR(排気再循環)の採用により、エンジンの吸排気損失(ポンピングロス)を低減。この他、バルブリフターやピストンリングへの水素フリーDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング、カムシャフトとクランクシャフト鏡面加工、可変容量オイルポンプ、ビーハイブスプリング、真円ボアなどの採用により、同社の小型車「マーチ」に搭載した排気量1.2lの3気筒ガソリンエンジン「HR12DE」よりも摩擦抵抗(フリクション)を10%低減している。
スーパーチャージャは、電動スイッチにより動作のオンオフを切り替えられる。市街地走行で大きなトルクが不要な場合はオフに、加速が必要な場合はオンにするなど、スーパーチャージャを効率よく制御することで、優れた燃費性能と、高い加速性能を両立できるとしている。
「ティーダ」は「ノート MEDALIST」に
新型ノートの車室内容積は、初代ノートよりも広くなり、現行のティーダと同等になるという。ティーダに相当するグレードは「MEDALIST」と名付け、高い質感を持つスエード調のクロスや合皮のコンビシート、同社の小型車では初となる、車両の上から見た映像を使って駐車が容易に行える「アラウンドビューモニター」などを標準で装備する予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 国内向け「ミラージュ」、燃費・排気量・サイズは「第3のエコカー」のど真ん中
国内向け予約が6月26日から始まる、三菱自動車のグローバルコンパクトカー「ミラージュ」。その燃費、エンジン排気量、サイズ、価格は、販売が好調な「第3のエコカー」のちょうど中間に位置している。 - マツダ SKYACTIVエンジン開発担当者インタビュー(前編):SKYACTIVエンジンは“理想の燃焼”に向けた第1ステップ
マツダの「デミオ」や「CX-5」など、次世代技術「SKYACTIV」を採用した新モデルの販売が好調だ。これらの車両の最大の特徴となっているのが、「SKYACTIVエンジン」による良好な燃費や排気ガス性能である。MONOistオートモーティブフォーラムでは、このSKYACTIVエンジンの開発を主導した、同社パワートレイン開発本部 エンジンプログラム主査の仁井内進氏へのインタビューを前後編に分けてお届けする。今回の前編では、SKYACTIVエンジンの開発の根幹を成す“理想の燃焼”に向けた取り組みについて聞いた。 - ホンダの「フィット ハイブリッド」、低速走行時のEV走行比率を向上
本田技研工業(以下、ホンダ)は2010年10月、小型車「フィット」のマイナーチェンジモデル(以下、新型フィット)と、ハイブリッドモデル「フィット ハイブリッド(以下、フィットHEV)」を発売した。