台湾から参加の吸引式マウスが優勝、2位との差はわずか1000分の6秒:第36回全日本マイクロマウス大会2015 レポート(3/4 ページ)
2015年11月20〜22日の2日間、東京工芸大学 厚木キャンパスで「第36回全日本マイクロマウス大会2015」が開催された。今回はマイクロマウスクラシックのエキスパート、フレッシュマンともに、海外勢が優勝した。
組み込み技術とともに進化を続けるマイクロマウス
マイクロマウス大会は1980年の初回より、基本的な競技ルールは変わっていない。しかし、毎年ロボットの性能は進化し、記録を更新し続けている。その背景には、組み込み業界の技術進歩がある。
例えば、マイクロマウスの小型化は2000年に入ってから急速に進んだ。筆者が初めてマイクロマウス競技を実際に見たのは2004年だったが、当時は、100gを切るマイクロマウスが登場し超軽量と驚かれていた。小型化が進んだのは、携帯電話をはじめとしたモバイル端末の普及が影響している。電子部品の小型化が進み、小型で高出力なバッテリーが個人でも入手しやすくなったのだ。
以前、マイクロマウス競技で上位入賞するのは、出場経験の長い社会人だった。2009年以降は、若手出場者が台頭しはじめ、現役大学生も優勝している。これは、インターネットで電子部品のスペックシートが誰でも入手できるようになり、パーツの購入も容易になったためだ。
過去の大会を振り返ると、2003年〜2008年までシンガポール勢が連続して優勝しており日本人マウサー(マイクロマウスを作る人々)は、なかなか上位に食い込むことができずに苦戦が強いられていた。2009年にマイクロマウスハーフサイズ競技がスタートし、当時、名古屋工業大学の学生だった加藤雄資さんが優勝したときには「8年ぶりの日本人チャンピオンが誕生!」と話題になった。
その後は、加藤さんに引っ張られる形で大学生たちが競い合うようにマイクロマウスの性能を向上させ、グングンとタイムを縮めてきた。若手マウサーの層が厚くなり、2013年、2014年のマイクロマウス競技は全て日本人勢が優勝している。
しかし、2015年は夏に全国各地で開催された地区大会のマウサーの間で「海外勢のレベルが格段にアップしている」と話題になった。2015年9月20日に開催された台湾大会では、2014年度にハーフサイズで優勝した「こじまうす10」(製作者:小島 宏一さん)が、優勝パラメーターで走行したにも関わらず3位入賞がやっとだった。
「この数年間、日本人選手が優勢だったのは、小型電子部品の入手が海外に比べて容易だったのも理由の1つ」(小島さん)
今後は、台湾、シンガポール、韓国のマウサーが猛追することが予想されるが、日本の参加者にも明るい話題はある。これまで新規参入のほとんどは大学生だったが、インターネットでマイクロマウス大会を知り、社内研修として取り入れた神戸の組み込み開発会社や、前回大会を見学にきて出場した同好会など、今回は社会人グループのデビューが複数あったのだ。
ロボット愛好者の間で「マイクロマウスは面白いけど、レベルが高すぎて参加できない」という声が、これまで多かった。確かに、トップクラスのマウサーがチャレンジしている領域はレベルが高い。メディアが大会レポートを掲載するときには、どうしても優勝ロボットにフォーカスしてしまうので、誤解を招いてきたのだろう。
実際は、マイクロマウスは数多くあるロボットコンテストの中で、非常に参加しやすい競技なのだ。
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