台形駆動で脱調を克服! ステッピングモーターをスピードアップ:マイクロマウスで始める組み込み開発入門(13)(1/3 ページ)
市販の組み立てキットを利用して、「マイクロマウス」の開発を進める北上くんとえみちゃん。オリジナルプログラムを作成し、ようやくマイクロマウスが走り出した。今回は、ステッピングモーターの“脱調”を克服して、より速く走らせる!
前回までのあらすじ
組み込み技術者に要求される要素が“ギュッ”と詰まった「マイクロマウス」。北上くんと新入社員のえみちゃんは、スキルアップを兼ねてマイクロマウスを開発中です。北上くんの指導を受け、えみちゃんもLEDやブザーの制御、A/D変換、シリアル通信といったマイコン制御の基礎を学んできました。そして、ようやくマイクロマウスが走り出しましたが……(前回の記事へ)。
ステッピングモーターの脱調とは?
――モグモグ、モグモグ(おやつの桜餅と柏餅を食べながら……)
あ〜、美味しい。春って、和菓子の気分ですよね!!
分かる、分かる!
(ゴックン)
で、センパイ! 何で、「ステッピングモーター」だとマイクロマウスを速く走らせるのが難しいんですか?
モーターを急加速すると「脱調」しちゃうんだよ。だから、ちょっと工夫が必要なんだよね。
だっちょう? ダチョウだったら足が速そうだけどなぁ……。
……。じゃ、じゃあ、まず脱調の説明からするよ。
前回、北上くんとえみちゃんは、ステッピングモーターを搭載する、マイクロマウスの市販組み立てキット「Pi:Co Classic」を動かすことに成功しました。ただ、えみちゃんは「もっと速く走らせたい!」と今のスピードに不満を感じています。
ステッピングモーターは、回転速度と移動距離をプログラムで指示できるため、初心者でも比較的簡単に扱うことができます。しかし、ステッピングモーターでより速く走らせたい場合、「脱調」に注意する必要があります。
前回紹介したように、ステッピングモーターはパルス信号に同期して回転します。急激な速度変化や過負荷時にモーターのトルクが不足して同期を失い、正しい動作ができなくなります。この現象を脱調といいます。
動画1は、ステッピングモーターが脱調している様子です。ステッピングモーターが脱調した際の動きや音を確認してみてください。
直進しているときは「急激に速度を上げたために脱調」、回転しているときは「速度を上げ過ぎた(過負荷)ことによる脱調」を起こしています。見た目からは脱調の原因まで分かりませんが、脱調には大きくこの2つの理由があることを覚えておいてください。
脱調を回避して、スムーズに加減速する
これがステッピングモーターを扱う際に注意が必要な脱調っていう現象だよ。
前回、ステッピングモーターの仕組みを学んだので、「同期を失う」というのも何となくイメージできますね。
じゃあ、脱調させずにスピードを上げるには、どうしたらいいんでしょうか?
モーターの気持ちになって、マイコンから適切にパルスを出せばいいんだよ。
モーターの気持ちになる……ですか。ううっ、もう少し具体的に説明してほしいですぅ〜。
急激な加速を避けて、緩やかにスピードを上げてあげればいいんだよ。もちろん、止まるときも急停止はダメだよ。
なるほど〜。でも、それをどうやってプログラムすればいいんでしょうか。よく分かりません……。
よし! じゃあ、一緒に考えいこう。
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