空気圧手術支援ロボット「EMARO」が早期に製品化できた理由:医療機器ニュース(2/2 ページ)
空気圧アクチュエータを応用した内視鏡ホルダーロボット「EMARO」は、手術支援ロボットとして見ると短期間で開発できた製品といえる。早期に製品化できた背景には、医療機器へのニーズを的確に把握している医師からの提言があった。
腹腔鏡手術の名医からの提案がきっかけに
川嶋氏は、IBISの研究開発を進める中で、「これまでの開発技術を生かして、より早く実用化できるものはないかと考えた」と語る。そこで、東京医科歯科大学 低侵襲医学研究センターの教授で、同大学医学部附属病院の医師である木原和徳氏から「まずは内視鏡を操作するシステムに応用してはどうか」という提案があった。腹腔鏡手術で著名な木原氏ならではのニーズがきっかけになって、EMAROの開発が始まったのである。
2013年に試作第1号が完成したEMAROだが、執刀医自身が内視鏡を保持/操作するという機能に絞り込んだこともあり、それから3年以内の2015年8月に上市することができた。
短期間で上市できた理由はもう1つある。EMAROは、内視鏡を保持/操作する機能しか持たないので、医療機器の分類ではクラスI(一般医療機器)にとどまる。このため、クラスIIIでは必要な薬事承認は不要であり、販売の認可を得るのに書類を提出するだけで済む。
また川嶋氏は、IBISの他にも新たなコンセプトによる手術支援システム「RoboSurgeon(ロボサージャン)」の開発も進めている。ロボサージャンは、「ダヴィンチ」に代表される従来の手術支援ロボットとは異なり「人間がロボット化する」(川嶋氏)というコンセプトに基づいている。
執刀医が多機能ヘッドマウントディスプレイを装着し、手持ちのロボット鉗子を使って手術を行うイメージだ。実はこのロボサージャンのアイデアも、先述の木原氏の提案がきっかけになっているという。
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