災害対策ロボットの課題と求められるブレークスルー:2015 国際ロボット展(2/2 ページ)
災害時に人が立ち入ることができない現場へロボットを投入し、人に替わって作業を行う、そんな災害対策ロボットへの期待はますます高まっています。ではその実現に必要な技術や要素とは?
災害に対し、ロボットで何ができるのか
災害に「全く同じ」というものはありません。災害が災害を呼ぶ複合型も多く、また、地理的な条件が異なれば災害現場の被害も当然異なります。では、これからの未知の災害にどう備えればいいのでしょうか。
オ氏や金広氏は「あらかじめタスクを決めて、それに特化したロボットをデザインすることは可能だが、それでは災害現場で通用しない、環境に対してどれだけの適応能力があるか、汎用性が重要になってくる」とします。
中村氏は「ソフトウェアとセンサー、メカニズムなどを短期間に組み合わせて動くものにしていく技術が必要なのでは」と述べますが、これは、稲葉氏が進めるオープンソースプラットフォームを基盤としたロボット開発に通じる考え方といえます。ロボット開発に共通となるプラットフォームが整備されていれば、その状況に合わせたシステムを短時間で作成できるようになります。
少しでも時間がある場合であれば時間をかけて作り込み、1時間、30分間が大事にという一刻を争う事態ならば即時性を重視したロボットを短時間で作り投入するという形です。そうしたプラットフォームの整備、維持コストをどういうふうに社会の中に認められるようにしていくか、世界中で考えなければならないだろうと言います。
考えようですが、この「プラットフォーム化による柔軟な開発」が可能となることにより、ロボット技術の汎用性を担保したまま、迅速に、実際の災害現場に即した対策ロボットを作ることができるのかもしれません。
最後に、司会を務めた弓取氏が「どこでどのような災害が起こるかわかりません。その中でデータ、知識、経験を広く共有し、対応していくことで、ロボットは災害対策のすばらしいソリューションになり得るのではないでしょうか」と述べてパネルディスカッションを締めくくりました。
関連記事
- 国際ロボット展が開幕、災害救助ロボやパワードスーツにも視線集まる
サービスロボットや装着型ロボットなど各種ロボットの展示される「国際ロボット展」が開幕した。産業用ロボットの展示が過半数を占めるが、災害救助ロボやパワードスーツにも注目されている。 - 出場チームに聞く「DARPA Robotics Challenge」決勝戦の舞台裏(前編)、あれは本当に“惨敗”だったのか?
災害対応ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge」で日本からの参加チームは最高10位と、振るわない結果に終わったが、あれは本当に"惨敗"だったのか?参加した産総研チームに決勝の裏側を聞いた。 - 出場チームに聞く「DARPA Robotics Challenge」決勝戦の舞台裏(後編)、「世界との差は開いた」が2020年には“現場”へ
世界から23チームが集まった、災害対応ロボット競技会「DARPA Robotics Challenge」決勝大会。日本からの参加は最高10位と決して振るわず、世界との差を痛感することになったが、産総研チームでは得られた課題から2020年の“現場入り”を目指す。 - トヨタの人工知能開発拠点に元DRCマネジャー「今度は私がバッターボックスに立つ番」
トヨタが「DARPA Robotics Challenge(DRC)」のプログラムマネジャーを務めた経験を持つギル・プラット氏をCEOに、シリコンバレーに新会社を設立する。人工知能とロボットを活用し、新産業の創出を目指す。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.