大田区町工場の「仲間回し」が織り成すオープンファクトリー:おおたオープンファクトリーとは(後編)(4/4 ページ)
町工場を観光資源として考える理由やオープンファクトリーを開催するまでの経緯、関連する取り組みや将来像などを関係者に聞いた。後編では町工場の視点からみた、おおたオープンファクトリーを紹介する。
子どもに仕事の様子を見せることができる
オープンファクトリーへの参加は「子どもや家族に仕事を見せる」という点でもよいそうだ。「お父さんが説明をして、お客さんは見ること聞くこと初めてのことが多いので熱心に聞く。拍手されると『うちのお父さんすごいんだ』と子どもは感じる」(佐山氏)とのことだ。また地域ブランディングの面でもメリットがあると考えている。例えばインターネットの検索で、「板金」に「大田区」というキーワードが加われば、ビジネスの機会が増えるからだ。
大田区の町工場全体で1つの“企業”
大田区の統計では、約半分の事業所が3人以下になるという。その中でも工和会協同組合は特に人数の少ないところが多いそうだ。一方でさまざまな得意分野があるので、近所を回れば1つの仕事ができる。これは「大企業の職長が区内にばらばらに点在しているようなもの」(佐山氏)だそうだ。こういった環境が、専門に特化した町工場でも、規模の大きい企業のように複数の技術をまとめた部品や完成品を提供することを可能にしている。
一方、その「生産ライン」は仕事に応じて柔軟に変更しなければならない。途中まではアイデア出しで加わっていたが最終的にその工場の技術が必要なくなった場合などはトラブルの元になってしまう。「顔見知りの人とは金銭が絡む仕事はしない」という言い伝えもあるそうだ。だが町工場の数も減っている中、そうは言っていられない面もある。そんな中でどういったルールを作っていくかは、これからの若い人たちの課題になるのではないかという。そのためイベントを通じながら関係を構築していくのは大いにプラスになるとのことだ。
ついにたどりついた「“本当の”モノづくりのイベント」
オープンファクトリーは、「いろんなイベントをやってきた中で、最後にたどり着いた“本当の”モノづくりのイベント」という感覚だと佐山氏はいう。工和会協同組合としては、今までイベントを通じて地域および工場同士の交流を図ってきた。そこでは職人の人柄などを知ることができるが、実際にどんな技術を持っているかはあまり分からなかった。オープンファクトリーによって、お互いの技術を知ることができたり技術実習ができるようになったりした。
「モノづくり企業として成長していくにはとてもいい」環境だと佐山氏はいう。このイベントは「自分たちが立ち上げから参加して基盤を作ったという自負があります」という。今後は区全体でスキルを上げながら、ブランディングやさらなる地域交流に貢献していきたいということだ。
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