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大田区町工場の「仲間回し」が織り成すオープンファクトリーおおたオープンファクトリーとは(後編)(3/4 ページ)

町工場を観光資源として考える理由やオープンファクトリーを開催するまでの経緯、関連する取り組みや将来像などを関係者に聞いた。後編では町工場の視点からみた、おおたオープンファクトリーを紹介する。

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「振動を感じる」――北嶋絞製作所

 2014年に仲間回しラリーを担当したメンバーの1人が、北嶋絞製作所の北嶋隆之氏だ。北嶋絞が担当するのは「絞り加工」になる。円形に切り出した0.7mm厚のステンレス板を、あらかじめ用意された型と共に回転させながら、ヘラといわれる道具を押し当てることによって、ろくろで回す粘土のように形を変形させていく。金属が思ったよりも簡単に自分の手で変形していくのは不思議な感覚だ。切削ほどの精度は出ないものの、一般的に切削のように無駄な材料が出ず、加工時間も短いといった特長がある。加工する材料の材質や形状に合わせてヘラを選んだり、さまざまな材料の特徴をつかんでうまく絞れるようになるには経験が必要で、一人前になるには何年もかかるそうだ。


北嶋絞製作所の北嶋隆之氏。絞る製品の大きさは直径数cmから大きいものは3mほどにもなる。写真のパラボラアンテナのお皿は3メートルだ。

左に型があり、右側からヘラを押し付ける。

 北嶋絞は以前からオープンファクトリーに参加していた。会場は工場から離れていたため、ヘラ絞りの機械はクレーンで吊り上げてトラックで持っていったそうだ。体験する人は小さい子どもから年配の人まで幅広く、また北嶋絞製作所と取引があったという人も参加しているそうだ。北嶋氏は「直接仕事にはつながらないが、自社に営業はいないので知ってもらえるのは有難い」という。

北嶋絞製作所で作る製品。筒状や口が厚いなど特殊なものも。

 仲間回しラリー以外の時間でも、せっかく来てくれた人には体験してほしいと、いる間じゅう案内を続けたそうだ。「絞りは振動を感じて感覚で行う仕事のため、それを一人でも多くに体験してもらえれば」北嶋氏はという。「加工した作品は持ち帰ることができる。人によって出来上がりが違い、唯一の製品になる」(北嶋氏)とのことだ。

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