車載イーサネットのミドルウェア開発、ルネサスとフリースケールどっちと組む?:ET2015
新たな車載ネットワークとして注目されている車載イーサネット。対応する車載システムを開発するには、ドライバICやマイコン、SoCの他に各種プロトコルを処理するミドルウェアも必要になる。「ET2015」では、ルネサスと組む図研エルミック、フリースケールと組む東芝情報システムがそれぞれ展示を行っていた。
新たな車載ネットワークとして注目されているEthernet AVB。車載イーサネットとも呼ばれており、車両周辺の状況を確認するサラウンドビューに用いる車載カメラの映像データを伝送する用途から採用が始まっている。
このEthernet AVBに対応する車載システムを開発するには、対応するドライバIC、イーサネットコントローラを搭載するマイコンやSoC(System on Chip)、そしてEthernet AVBに関わる各種プロトコルを処理するミドルウェアも必要になる。「組込み総合技術展 Embedded Technology 2015(ET2015)」(2015年11月18〜20日、パシフィコ横浜)では、Ethernet AVBに対応するマイコンやSoCを展開するルネサス エレクトロニクス、Freescale Semiconductor(フリースケール)と密接に連携して開発されたEthernet AVB対応のミドルウェアが展示されていた。
図研エルミックはルネサスと共同開発
図研エルミックは、ルネサス エレクトロニクスと連携して開発したEthernet AVB(エンドポイント)対応ミドルウェア「Ze-PRO AVB(Endpoint)」を紹介した。
Ethernet AVBのネットワーク構成は、信号の送信側のトーカー(Talker)と受信側のリスナー(Listener)から構成される。Ze-PRO AVB(Endpoint)は、トーカーやリスナーを容易に実装するためのミドルウェアライブラリである。
2014年度後半からルネサスと共同開発を進め、ルネサスがカーオーディオなどに展開している「Cortex-A9」を1コア搭載するマイコン「RZシリーズ」向けの製品を2015年4月にリリースした。動作OSはイーソルの「eT-Kernel」、ARMプロセッサ向けの「CMSIS-RTOS RTX」となっている。
展示では、Ethernet AVBの特徴の1つであるUTP(シールドなしツイストペアケーブル)で接続したカーオーディオシステムや、データ伝送とともに電力供給も行えるPoE(Power over Ethernet)を用いたEthernet AVBによる楽曲データ伝送のデモンストレーションを披露した。「今後はRZシリーズに加えて、映像データも扱えるSoC『R-Carシリーズ』への対応も計画している。当社はTCP/IPを組み込み機器向けに実装するための開発で20年以上の経験がある。Ze-PRO AVB(Endpoint)では、その知見を生かして130Kバイトというコンパクトなソフトウェアサイズに収めた」(図研エルミックの説明員)という。
フリースケールの「i.MX」に最適化した東芝情報システム
一方、東芝情報システムは、フリースケールのSoC「i.MXファミリ」に最適化したEthernet AVB対応のミドルウェアを展示した。2016年春から、サポートサービスと併せて提供する予定の製品だ。
このミドルウェアの特徴は、映像/音声データを伝送する際の遅延時間(レイテンシ)が極めて短いことだ。HD映像を伝送する際の遅延時間は数msとなっている。Ethernet AVBの場合、映像/音声データを送信側でエンコードし、受信側でデコードする必要がある。「これらのプロセスをトータルして遅延時間が数msというのは競合他社と比べてもかなりの実力になると思う。フリースケールのi.MXファミリに最適化したからこそ実現できたことだ」(東芝情報システムの説明員)。
展示では、車載カメラの映像やHDの映像コンテンツを送信するトーカー側と、Ethernet AVBを介して受信するリスナー側でそれぞれ映像を表示し、ほとんど遅延が発生していないことを示した。また、同じイーサネットのネットワーク内で大容量でのデータ伝送が行われる際にも、Ethernet AVBの帯域を確保する機能を利用して、トーカー側からリスナー側へのデータ伝送に影響が起こらないことも示した。
東芝情報システムのEthernet AVBの展示デモ。左側にあるトーカーから、右側にある2台のリスナーに映像データを低遅延で伝送している。接続ケーブルは一般的なイーサネットケーブルだが、「UTPで接続しても同様の性能を発揮できる」(東芝情報システムの説明員)という(クリックで拡大)
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