障害報告が劇的に減少、図研はいかにしてソフトウェア品質を改善したのか:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
電子機器設計用ツールの大手ベンダーである図研は2015年10月16〜17日にプライベートイベント「ZUKEN Innovation World 2015」を開催。同イベントに登壇した図研 常務取締役 EDA事業部長務める仮屋和浩氏が、同社のソフトウェア開発環境や、品質向上に向けた体制変更などの取り組みについて紹介した。
障害報告件数が劇的に減少した秘密
新たなソフトウェアの開発体制では図研のイントラサイトの中に、各開発者の暗黙知を常時集約していくデータベースを構築。さらに障害管理システム、図研独自開発のビルドマスターに加え、開発工番/工程管理システムなどとも連携させる体制を整えた。
「工番をとって誰かがインプリメントし、開発してマスターに反映させても、どのソースコードがどの工番と連携しているのかがすぐ分かるようになった。開発者からすると全てを見られているようで嫌かもしれないが、やはり“見える化”しなければ分析もできない。さらに障害管理システムも連携することで、現在ではユーザーから障害報告が入ると、どの工程番号が該当するのか、誰が書いたどのコードなのかまでがすぐに分かり、自動的に担当者に通知がいくようになっている」(仮屋氏)。
この開発体制においては、各開発者がどれくらいのコード数を書き、その中で発生したエラー件数などのデータも収集できている。図研ではこうした各個人のスキルデータを業務配分や開発チームの編成、人材育成などにも活用しているという。
また、機能仕様、内部仕様、インプリメント、QCといった開発の各工程の間でレビューを入れる方式を採用し、品質のチェック体制も見直した。「レビューする側も、もしミスを見逃したらそれは自分のエラーとしてカウントされるという仕組みになっている。さらにセルフテストの後は、時間がかかってもローカルでコンパイルさせるという方式に変更した。時間はかかるがこれで確実に品質が向上した」(仮屋氏)。
こうした品質改善の成果が最初に反映されたのはCR-5000のRev.7ごろからで、図研はその後も改善を推進。その成果は非常に大きく、従来は開発時のエラー数は数千におよんだが、CR-5000のRev.10ではこれが一桁にまで減り、リリース後の障害報告も「劇的に減った。最初からこの品質管理体制で開発したCR-8000は、リリース以降現在に至るまでも数件しか障害報告が発生していない」(仮屋氏)という。
また、ソフトウェア開発にかけていたリソースの割合を分析すると「従来を30%が新規開発、35%を障害修正の時間、25%が過去のソフトウェアの障害修正、10%がフィールドでの活動(顧客対応)だった。これが現在では同じリソースでそれぞれ55%、25%、2%、18%となっており、品質が向上したことで障害対応が少なくなり、新規開発やフィールド活動に多くのリソースを割けるようになった」(仮屋氏)と語っている。
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