3Dプリンタは製造装置の一角へ、生産プロセス変革を巻き起こす積層造形技術:次世代生産技術(3/3 ページ)
ドイツ貿易・投資振興機関は今回で11回目となる「日独産業フォーラム 2015」を開催。今回は注目を集めるインダストリー4.0を背景としつつ、テーマを「次世代生産技術」とし、3Dプリンタを中心とした積層造形技術による製造プロセスの変化などについて紹介した。本稿では、ドイツのフラウンホーファーIWU(工作機械・成形技術研究所)所長のヴェルフーグントラム・ドロッセル氏の基調講演の内容とインタビューをお伝えする。
インダストリー4.0はカイゼンのメッシュを細かくする
ここからは記者を招いて行われたプレスミーティングの中でのインダストリー4.0に関するドロッセル氏への一問一答の内容をお伝えしよう。
―― インダストリー4.0への注目が広がる中、ドイツや日本の間で、投資や新たな動きについてどう考えているか。
ドロッセル氏 インダストリー4.0は大きなビジョンでありアイデアである。多くの産業領域への影響をもたらすものではあるが、長いロードマップにそって進められているもので、日独の産業にすぐに大きな影響をもたらすというものではない。ただ、このロードマップに沿ったプロジェクトは数多く進められており、それらの個々の動きが現在ではインダストリー4.0の産業への影響ということがいえる。
―― 日本では「カイゼン」など人を基軸とした生産現場の強みがあるが、インダストリー4.0になるとどう変わると考えるか。
ドロッセル氏 「カイゼン」はドイツの自動車メーカーなどでも採用しており、よく知られている。インダストリー4.0によりIoT(Internet of Things)を活用したプロセスモニタリングなどが進んでもカイゼンの仕組みそのものは変わらない。ただ、その情報を取得し、カイゼンのための基盤とする情報のメッシュが細かくなるのだと考えている。また、インダストリー4.0では、1つの工程だけでなくさまざまな工程から取得した情報を組み合わせて一元的に判断できるようになる。そうすることで、生産ライン全体を変えたり、工場のプロセス全体をカイゼンしたりすることができるようになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ドイツ製造業の危機感が生んだインダストリー4.0、日本はどうすべきか?
ドイツ貿易・投資振興機関は今回で10回目となる「日独産業フォーラム 2014」を開催。今回はテーマを「インダストリー4.0」とし、同分野の研究の第一人者と見られインダストリー4.0プロジェクトにおける技術イニシアチブ「スマートファクトリーKL」の会長を務めるデトレフ・チュールケ氏が基調講演に登壇した。同氏の基調講演の内容とインタビューをお伝えする。 - 日本の製造業よ、第4次産業革命で規格策定の舞台に立て
ドイツのインダストリー4.0や米国のインダストリアルインターネットコンソーシアムなど、世界的にICTを活用した新たなモノづくりが胎動している。その中でドイツおよび米国のプロジェクトそれぞれに参加し、存在感を示しているのが米国National Instrumentsだ。同社でこれらの活動に参加しているグローバルテクノロジー&マーケティングディレクターのラマン・ジャマル氏に話を聞いた。 - 足し引き自在で効果は無限大! 金属3Dプリンタと切削加工の複合機投入が本格化
「第27回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2014)」で大きな見どころの1つとなったのが、工作機械と金属3Dプリンタの複合機だ。金属を「足す」3Dプリンタと金属を「引く」切削加工機が組み合わさることでモノづくり現場にどういう価値をもたらすのだろうか。 - ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」という言葉をご存じだろうか? 「インダストリー4.0」は、ドイツ政府が産官学の総力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクトだ。インダストリー4.0とは何なのか。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。 - テーマサイト「インダストリー4.0が指し示す次世代工場の姿」