3Dプリンタは製造装置の一角へ、生産プロセス変革を巻き起こす積層造形技術:次世代生産技術(2/3 ページ)
ドイツ貿易・投資振興機関は今回で11回目となる「日独産業フォーラム 2015」を開催。今回は注目を集めるインダストリー4.0を背景としつつ、テーマを「次世代生産技術」とし、3Dプリンタを中心とした積層造形技術による製造プロセスの変化などについて紹介した。本稿では、ドイツのフラウンホーファーIWU(工作機械・成形技術研究所)所長のヴェルフーグントラム・ドロッセル氏の基調講演の内容とインタビューをお伝えする。
バイオ3Dプリンティングの研究
フラウンホーファーでも「フラウンホーファー・アディティブマニュファクチャリング・アライアンス(Fraunhofer Additive Manufacturing Alliance)」を作り、積層造形技術に関する研究開発を進めている。さまざまな領域での技術開発を進めているが、その成果の1つがバイオプリンティング技術である。フラウンホーファーCMIなどが開発した、印刷と積層造形の技術を組み合わせて肝臓細胞の成形を行う技術だ。ドロッセル氏は「将来的にはさまざまなものが積層造形で造形されるようになるだろう」と述べている。
試作用途から連続生産へ
同氏は「積層造形技術は、現在はプロトタイプや試作部品、限定された一部の部品などに使っているだけだが、近い将来には小ロットの製品製造などにも使われるようになる。将来的には、独立部品や組み立て生産など、幅広い生産工程で利用できるようになるはずだ」と述べている。
ただ一方で同氏はその実現に向けた課題についても指摘する。「多彩な生産用途で積層造形技術を用いるには、多くの課題が残されている。例えば、積層造形の周辺だけを見ても材料の種類やリサイクルの問題、生産に耐えうるデザインについての知識の欠如やデザインの盗用の問題、高い生産コストやサイズの問題などがある」(同氏)。
課題はこれだけではない。さらに、積層造形技術を本当に価値あるものにするには周辺環境もそれに合わせたものにしなければならないからだ。「設計・生産プロセスとして、CADから生産への連続性の問題や、サプライチェーンの問題、製品保証の問題、アフターサービスを度するのかという問題など、クリアしなければならない課題は多い」と同氏は述べている。
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