もはやPHEVやEVは特殊なクルマではない――東京モーターショー2015レポート:和田憲一郎の電動化新時代!(18)(3/3 ページ)
コンセプトカーやスポーツカーに注目が集まる「東京モーターショー2015」だが、次世代エコカーといわれてきたプラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)を各社が多数展示している。これらを見ていると、もはやPHEVやEVが特殊なクルマではなくなりつつあることが感じられる。
e-mobility周辺の商品開発に萌芽
一方、日系自動車メーカー、部品メーカーとも、いち早く電動車両を取り巻く周辺部品に着目し、今回も優れた商品展示が見られた。
ホンダは、既に「CEATEC JAPAN 2015」でも展示していたが、FCVと接続して外部に電力を供給することのできる「Power Exporter 9000」を展示している。特徴は9kVAと定格出力が大きいこと、かつ交流出力で100Vだけでなく200V(単相)にも対応していることであり、今後の災害などに役立つものと思われる。ただし、重量が52kgと大人2人でなければ持ち運べないため、今後出力を下げながら小型・軽量化した商品も生まれるのではないだろうか。
ホンダの「Power Exporter 9000」。「東京モーターショー2015」のホンダのプレスブリーフィングでは、量産予定の「クラリティ フューエルセル」を使って同社社長の八郷隆弘氏が紹介(クリックで拡大)
また、本格的なV2H(Vehicle to Home)のパワーコンディショナーもデンソーから展示されていた。これも出力が9kWと電力供給レベルが大きく、公民館などで活用が期待される。本格的なV2Hパワーコンディショナーは、既に積水化学工業から2014年に商品化されているが、今後このような商品が増えてくるものと思われる。
さらにある意味、番外編かもしれないが、ホンダから「E500」と呼ばれる蓄電機が展示されていた。まるでトースターか、持ち運び用のラジカセのようであり、とてもオシャレな商品である。出力電力は500Wと大きくはないが、災害時に携帯電話機やPC、テレビの電源として重宝されるのではないだろうか。2017年春発売と聞いており、とても楽しみな商品である。このように電動車両の周辺に、今後も新しいアイデアによる新商品の出現に期待したい。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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