新型「プリウス」に初の四輪駆動モデル、「E-Four」の小型化で実現:エコカー技術
トヨタ自動車は新型「プリウス」に初の四輪駆動モデルを追加する。車両サイズや全高が比較的大きいSUVやミニバンなどのハイブリッド車を四輪駆動化する際に用いていた「E-Four」を小型化することで実現した。
トヨタ自動車は2015年10月13日、同年12月に発売予定の新型「プリウス」に初めて四輪駆動モデルを追加することを明らかにした。車両サイズや全高が比較的大きいSUVやミニバンなどのハイブリッド車を四輪駆動化する際に用いていた「E-Four」を小型化することで実現した。
E-Fourは、モーターで後輪を駆動する電気式の四輪駆動システムである。新型プリウスのE-Fourは、最高出力5.3kW/最大トルク55Nmの誘導モーターを組み込んだリヤトランスアクスル&リヤモーターとリヤインバーターから構成されている。電源は駆動用バッテリーを用いる。
新型プリウスの四輪駆動モデルは、全高が1475mmとFF車よりも5mm高くなるとともに、E-Four関連のシステムを荷室床下部に配置する必要があるために荷室容積が502l(リットル)から457lに減る。ただしこれは、FF車の荷室にスペアタイヤを装着した場合と同じである。なお、3代目プリウスの荷室容積が446lなので、四輪駆動モデルであっても3代目プリウスより荷室が広がったことになる。
発進時や滑りやすい路面で後輪を駆動
一般的なFFタイプのエンジン車を四輪駆動化する場合、車両の床下にトランスファーやプロペラシャフトといった動力を後輪に伝達する部品を配置する必要がある。ただしFFタイプのハイブリッド車の場合、荷室下部などに配置することが多い二次電池パックや、エンジンルーム内のモーターやPCU(パワーコントロールユニット)と二次電池パックの間をつなぐワイヤーハーネスが干渉するため、トランスファーやプロペラシャフトを配置することは難しい。
この課題を解決するために開発されたのがE-Fourである。E-Fourは車両前部と後部の加速度、車輪速、ヨーレートなどのセンサー情報から自車の状態を判断し、E-Fourのモーターを使って安定した走行を可能にする。後輪を駆動させる場面は主に、発進加速時や雪路などの滑りやすい路面走行時などだ。
ただし、これまでE-Fourを搭載できていたのは、「ハリアー」や「レクサスRX」などのSUV、「アルファード」「ヴェルファイア」「エスティマ」といった大型のミニバンに限られており、プリウスなどのセダンやハッチバックには搭載できていなかった。
今後、新型プリウスに搭載した新開発のハイブリッドシステムとE-Fourの採用が拡大すれば、「カムリ」や「オーリス」といった欧米の主力車種の他、「ノア」「ヴォクシー」「エスクァイア」などの5ナンバーミニバンにもハイブリッド車の四輪駆動モデルが追加可能になるとみられる。
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