「プリウス」の進化を支えた開発マネジメントの裏側:FTF Japan 2014 基調講演リポート(1/4 ページ)
FTF Japan 2014の基調講演にトヨタ自動車 ユニットセンター副センター長 モータースポーツユニット開発部 統括取締役で専務役員の嵯峨宏英氏が登壇。同氏は「プリウス」や「アクア」に代表されるトヨタ自動車のハイブリッド車開発に向けた取り組みと、その開発体制の変遷について語った。
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは2014年12月5日、東京都内でプライベートイベント「フリースケール・テクノロジ・フォーラム・ジャパン(FTF Japan)2014」を開催した。その基調講演に、トヨタ自動車 ユニットセンター副センター長 モータースポーツユニット開発部 統括取締役で専務役員の嵯峨宏英氏が登壇。同氏は同氏は「プリウス」や「アクア」に代表されるトヨタ自動車(以下、トヨタ)のハイブリッド車開発に向けた取り組みと、その開発体制の変遷について語った。
「プリウス」はいかにして生み出されたのか
トヨタは2014年10月に、同年9月末時点でのハイブリッド車の世界累計販売台数が700万台を突破したことを発表した。その原点となる初代プリウスを、トヨタが世界初の量産型ハイブリッド車として発売したのは1997年にまでさかのぼる。
その初代プリウスの開発体制について嵯峨氏は、「1つの部署、いわゆる大部屋にモーター、パワーコントロールユニット(PCU)、電池などハイブリッドシステムに関する設計チームをまとめ、その他の関係部署は外からサポートするという体制だった」と説明する。初代と2代目のプリウスは、嵯峨氏が「第1期」と名付けるこの体制によって開発が進められたという。
「第1期」体制の限界
初代プリウスの走行燃費は10・15モードで28.0km/l(リットル)で、その後のマイナーチェンジによって31.0km/lまで高められた。トヨタは2代目プリウスではさらなる燃費性能の向上を目指し、初代プリウスに搭載されたハイブリッドシステム「THS(Toyota Hybrid System)」に改良を加えている。それがトヨタのハイブリッド車の販売拡大の基盤システムとなった「THS II」だ。THS IIでは、PCU内に昇圧回路を組み込んでモーターの最高出力をTHSの33kWから50kWに高めており、2代目プリウスの10・15モードでの走行燃費35.5km/lの実現に貢献している。
しかし嵯峨氏は、「3代目プリウスの開発に向けて、第1期の体制に限界が訪れた」と語る。その大きな要因には2つの理由があるという。1つは「エコカーは普及してこそ環境への貢献」というトヨタの経営理念に基づく、低価格化を実現するための原価低減に対する取り組みのさらなる強化だ。プリウスの場合、ガソリン車と比較した原価コストの増分を、代を重ねるごとに半減させるという目標が掲げられている。つまり3代目のプリウスでは、ガソリン車に対するコストの増加分を初代と比べて4分の1に削減しなければならない。
もう1つは、ハイブリッド車の普及を目的とするTHS IIを搭載したハイブリッド車の車種拡大による開発負荷の増大だ。トヨタは2003年9月の2代目プリウス発売以降、「ハリアー ハイブリッド」や「レクサスGS450h」など、THS IIを搭載する新型車を続々と投入してハイブリッド車の販売を本格化させていった。
嵯峨氏は「こうしたコスト削減目標の設定と、開発車種の急増により必然的にマネージメントの方法を変更する必要があった」と語る。
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