「プリウス」の進化を支えた開発マネジメントの裏側:FTF Japan 2014 基調講演リポート(2/4 ページ)
FTF Japan 2014の基調講演にトヨタ自動車 ユニットセンター副センター長 モータースポーツユニット開発部 統括取締役で専務役員の嵯峨宏英氏が登壇。同氏は「プリウス」や「アクア」に代表されるトヨタ自動車のハイブリッド車開発に向けた取り組みと、その開発体制の変遷について語った。
モノづくりそのものの抜本的な見直しへ
3代目プリウスや車種が拡大するハイブリッド車の開発に向けて、トヨタのハイブリッド車の開発体制は刷新された。「第2期」となるこの開発体制では、これまでの第1期体制をさらに拡大し、開発部署をハードと制御の2部に分けるとともに、エンジン、トランスミッション、モーター、PCU、電池の各開発チームが1つの大部屋に集約された。さらに、従来は大部屋全体と生産部門の間だけで行っていた連携を、各開発チームが対応する生産技術部門との間で個別に行うことにより開発効率を高めたという。
こうした第2期となる体制のもとで開発が進められ、2009年5月に発売された3代目プリウスは、10・15モード燃費で38.0km/lを達成した。この燃費性能を支えているハイブリッドシステム「リダクション機構付きTHS II」は、各ユニットの小型化・軽量化に加え、エンジンも改良されるなど、2代目プリウスに搭載されたTHS IIの90%以上の部分を新たに開発しているが、開発コストの削減により205万円からという販売価格を実現している。
嵯峨氏は3代目プリウスの開発について、「このレベルの原価低減や、ユニットの小型化や軽量化というのは、正に技術開発そのもの。単なる開発の改善や、一定量をまとめて開発するといったコスト削減の効果だけでは到底実現できなかった。3代目プリウスの開発に向けた体制変更は、開発ユニットごとに活動するのではなく、制御を含めたシステム全体で弱点をカバーしていくという、モノづくりそのものの抜本的な見直しだった」と語る。
ハイブリットシステムの小型化への挑戦
次に嵯峨氏は、2011年12月に発売された小型ハイブリッド車「アクア」の開発体制にいて説明した。同氏によれば、アクアは「プラグインハイブリッド車を除く内燃機関搭載車の中で世界一の低燃費」「小型化および低価格の実現」という2つのコンセプトに基づいて開発がスタートしたという(関連記事:プリウス以上の車を作るには)。
アクアのハイブリッドシステムは、プリウスのものをベースとしながらも、コンパクトカーという車両サイズに合わせて、多くのユニットを小型化することが最も大きな課題となった。実質的には新開発に近いこの取り組みに合わせ、トヨタはこれまでの第2期開発体制を刷新したという。この第3期となる開発体制の大きな特徴が、デンソーなどのサプライヤのエンジニアをトヨタの開発チームと同じ大部屋に集約し、設計と生産を同時に行えるようにした点だ。アクアは、トヨタとサプライヤの両人員を合わせ、総勢300人の体制で開発が進められた。
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