「プリウス」の進化を支えた開発マネジメントの裏側:FTF Japan 2014 基調講演リポート(3/4 ページ)
FTF Japan 2014の基調講演にトヨタ自動車 ユニットセンター副センター長 モータースポーツユニット開発部 統括取締役で専務役員の嵯峨宏英氏が登壇。同氏は「プリウス」や「アクア」に代表されるトヨタ自動車のハイブリッド車開発に向けた取り組みと、その開発体制の変遷について語った。
次世代を担うモーターへのこだわり
アクアのハイブリッドシステムは、3代目プリウスのものと比較して、エンジンのサイズは51mm、トランスアクスルは21mm、バッテリーは148mm小型化している。また、それぞれの重量は16.5kg、8kg、11.0kgの軽量化に成功している。さらに、バッテリーをリヤシートの下部に配置するなど、車体の設計にも工夫を凝らし、走行燃費が10・15モードで40.0km/lという性能と、車内スペースの確保を両立させた。嵯峨氏は、こうしたアクアのハイブリッドシステムの小型化に関する取り組みの一例として、新型モーターの開発事例を紹介した。
アクアのトランスアクスルに搭載されている新型モーターには、断面が長方形の銅線を巻き付ける新方式が採用されている。これにより、従来のプリウスで採用されていた断面が円形の銅線を使うモーターと比較して、空間を効率的に利用できる。さらに、その巻き方にも特徴があり、鳥かごを編むように銅線を巻き、そのなかにステータコアを差し込むという構造になっている。事前に銅線の最終形状が決まるため、従来の後から銅線を巻く方法と比較してコイルエンドを小さくできるというメリットがあるという。
嵯峨氏はこの新開発のモーターについて「アクアへの採用を決断したのは、通常の開発工程と比較して1年以上遅い段階だった。それでも採用を推し進めたのは、次世代技術を前倒しすることで、ハイブリッドシステムの大幅な小型・軽量化を図りたいという理想を追求したかったからだ」と説明する。
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