「プリウス」の進化を支えた開発マネジメントの裏側:FTF Japan 2014 基調講演リポート(4/4 ページ)
FTF Japan 2014の基調講演にトヨタ自動車 ユニットセンター副センター長 モータースポーツユニット開発部 統括取締役で専務役員の嵯峨宏英氏が登壇。同氏は「プリウス」や「アクア」に代表されるトヨタ自動車のハイブリッド車開発に向けた取り組みと、その開発体制の変遷について語った。
難航する新型モーターの開発
通常より1年以上遅いタイミングでアクアへの採用が決まった新型モーターは、技術的に未完成だった部分もあり、その開発は難航したという。しかし嵯峨氏は、新たな開発体制を敷いた効果により、この難局を乗り切ることができたと説明する。「トヨタとデンソーが協力し、設計と生産を同時に行ったことで開発が成功した。新体制によりこの新型モーターは8カ月の間に3回の試作と同時に、量産設備の設計と品質の確保を行うことができた。もし設計を外注していたらこのレベルの開発は行えなかった」(嵯峨氏)。
また嵯峨氏は、この新たな開発体制がもたらした効果は、アクアのハイブリッドシステムの小型化を成功させただけではないと語る。「これまでトヨタとデンソーは、メーカーとサプライヤという両社の立場の違いにより、十分に良い関係だったとは言いきれない部分もあった。しかし、このアクアの開発を通じて、お互いに腹を割って話せる良い関係を構築することができた。また、こうした厳しい開発環境の中で多くの人材を育成することもできた」(嵯峨氏)。
リーダーに求められる資質とは
嵯峨氏は講演の最後に、これまでトヨタのハイブリッドシステムの開発リーダーを務めてきた経験から「個人の能力など、良い面を伸ばし、組織として団結していくには人間的なマネジメントが重要であると感じた。リーダーには、部下になめられない総合的な技術力、組織や人員を惹きつけて動かす人間的パワーが重要。組織や個人の能力やアウトプットの質を高めることで、さらなる挑戦につなげていきたい」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- プリウス以上の車を作るには
@IT MONOist 環境技術フォーラムでアクセスが多かった記事を隔週で紹介します。今回の集計対象期間は、2011年12月26日〜2012年1月15日です。 - トヨタ自動車のハイブリッド車累計販売が700万台を突破、9カ月で100万台ペース
トヨタ自動車は、ハイブリッド車のグローバル累計販売台数(プラグインハイブリッド車の「プリウスPHV」を含む)が、2014年9月末時点で705万台になったと発表した。2013年12月末に600万台を突破しているので、約9カ月で700万台を突破したことになる。 - トヨタが燃料電池車の価格を700万円に低減、ハイブリッド車と部品を共用
トヨタ自動車はセダンタイプの燃料電池車の量産モデルを公開。日本では2014年度内(2015年3月末まで)に発売し、価格は700万円程度を予定している。燃料電池車固有の部品を除き、ハイブリッド車との部品共用でコスト削減につなげたという。