オムロン「卓球ロボ」の進化が示すのは“45年前に予見した未来”:CEATEC 2015(3/3 ページ)
「CEATEC JAPAN」で2年連続で登場し注目を集めるオムロンの「卓球ロボット」。スポーツロボットを販売するわけではないオムロンがなぜ卓球ロボットの進化を追求するのか。同社がFA領域で実現したい将来像について考察する。
オムロンが既に予見していた未来像
卓球ロボットや、やわらか制御技術、人と一緒に働くロボット技術が示しているのは、「人と機械が協調して共に働く」という世界の実現だといえる。今までの機械は人間の指示を忠実に実行するというもので、同じ作業を大量に素早くこなすということに機械の価値があった。しかし、技術が進化し社会も多様化へと進む中で機械の在り方も変化しつつある。ビッグデータ解析や人工知能などの技術が進む中、機械が自律的に人間の作業を支援するという時代に入りつつあるのだ。
実際に産業用ロボットの領域では規制緩和により、従来は安全柵の中でなければ使用できなかったものが、適切な安全措置を講じれば、人と同じ空間で利用できるようになるなど「人とともに働く」という門戸が開放されようとしている。
1970年代から未来を予測した「SINIC理論」
実はオムロンでは、こうした将来像を既に1970年から予測していたという。オムロンは1970年に社会と科学、技術は相関性を持って変化するということを説明する未来予測論「SINIC理論」を提唱。現在も経営の羅針盤として使い続けている。SINIC理論のSINICは「種(Seed)」「革新(Innovation)」「必要性(Need)」「刺激(Impetus)」「円環的発展(Cyclic Evolution)」の頭文字で構成された造語だ。同理論が提唱されて既に45年になるが、現在の社会や技術の変化を的確に言い当てていることで注目を集めている。このSINIC理論で見た場合、現在は「最適化社会」に当たり、これは人間と機械が理想的に調和した社会を示すというのだ。
今回オムロンが出展した卓球ロボットは、ある状況(人がボールを打つ)に対し、的確な分析(ボールがどのコースに飛んでくる)を行い、それに合わせて最適な制御と動作を行う(ラケットの位置を最適な位置にコントロールして配置)と同時に、その情報を人間にフィードバックし人の作業を支援する(ボールを打ち返すコースと落下点を表示)という作業を行っている。そしてこれらのことを、先進的なハードウェアではなく、主にセンシング技術と制御技術、情報を分析して予測するアルゴリズムで実現していることが特徴だ。
すなわち、卓球ロボットが指し示しているのは、機械の分析力や動作能力を最適に使って最適に人間を支援する「人間と機械の調和」であり、さらにそのカギを握る技術がオムロンが強みを持つ「Sensing & Control +Think」だと訴えているといえる。
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