オムロンの卓球ロボットは“寄り添う”から“支援する”へと進化した:CEATEC 2015
オムロンの「卓球ロボ」が“人に寄り添う”から“人を支援する”ロボットへと進化した。ハードウェアの変更を伴わない進化に、オムロンがこのロボットで表現したいメッセージが見え隠れする。
2014年のCEATECでオムロンが披露した「ラリー継続卓球ロボット」は、ラリーを長く続けるためにロボット自身が相手の位置や、向かってくるボールの挙動などを総合的に判断し、相手の打ちやすい場所へボールを打ち返す、いわば“人に寄り添う”ロボットだった。そして2015年のCEATECに登場した卓球ロボットは“人に寄り添う”から“人を支援する”ロボットへと進化した。
卓球ロボットが人とラリーをするためには、まず向かってくるボールがどこに来るかを予測する必要がある。ロボットはボールの認識にステレオカメラと人感センサーを使用してボールの三次元測位と速度計測を行い、同時に相手と相手のラケット位置を検出する。そして、得られた情報を基にボールの軌道と速度を予測、その予測情報を使ってラケットの軌道を計算し、相手と同様の速度で返球する。
この仕組みそのものはカメラなどハードウェアも含めて2014年版と変わっていないが、2015年の新型は向かってくるボールの回転も認識するようになり、合わせて軌道予測アルゴリズムのアップデートが行われた。卓球の球は軽いため回転が軌道に及ぼす影響は大きく、回転認識の追加が予測精度の向上に大きく貢献するが、予測に用いる要件が増えることにもつながるため、予測精度とリアルタイム性確保のバランスに腐心したと担当者は話す。
もう1つ追加されたのが、ロボットからの返球地点を卓球台に表示する機能だ。返球地点をロボットが打ち返す前に表示することで、ヒトが返球できる可能性を向上させ、結果としてラリーが続くという“達成感”を得られる可能性をも高めている。これがヒトへの支援機能だ。
返球地点は予測ではなく、ロボットには目標として設定されており、ロボットが打ち返す前に、返球地点は決定している。現在は相手のいる地点(打ち返しやすい地点)へ打ち返すようにしているが、対戦相手の返球を学習することで、あえて返球率が悪い地点へ打ち返し、“人を上達させる”ロボットへと進化させる構想もあるという。
登場時は人と寄り添い、次は人を支援し、将来的には成長させる。これは同社が目標として掲げる「機会が人の目的に合わせる“協働”から、より創造的な活動を行える人と機会の“融和”」につながる。今回の卓球ロボットは機械的な部分とセンサー類は前回と同様ながら、アルゴリズム(判断力)の進化によって、人とロボットの関係を“協働”から“融和”に進化させた。この関係性の進化こそ、2015年版卓球ロボットでオムロンが訴えたいことなのだろう。
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