IoTサービスのカギを握る「顧客コスト」と「利便性」:製造業のためのサービスビジネス入門(5)(3/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)の進展により製造業においてもサービスビジネス拡大が期待されています。本連載ではサービスビジネスの基本的な話を分かりやすく解説しています。5回目となる今回はIoTをベースとしたサービスビジネスでも重要になる「顧客が負担するコスト」と「利便性」について解説していきます。
「〜でも」を満たす「Convenience」
それでは、次に「Convenience(Place & Time)」について見てみましょう。「Convenience」は直訳すると「利便性」を意味しますが、直観的に表現すると昔のコンビニエンスストアの売り文句であった「開いてて良かった」という状態のことです(若い方には何のことやら分からないかもしれませんが)。
まずは、そのサービスが活用できる場所(Place)が重要になります。設備に取り付けたシステムだからといって、その設備のところまでいかないと、データや状態が確認できないというのは不便です。それよりは、離れたところからでも状態を把握できた方がさまざまな手間を削減できるはずです。
また、これらデータや状態を必要な時(Time)に入手したいと考えるはずです。この際、データあるいは状況確認のための「アクセス・タイミング自由度」と、アクセスした際のデータ、状況がいつの時点のものであるかという「情報鮮度」の2点が問われることになります(図3)。
近年では、1人暮らしでペットを飼育するオーナー向けに留守中のペットの状態をカメラなどで映してスマホで確認できるというサービスなども生まれています。ペットが何をやっているかが、電波が届く場所であれば「自分が見たい時にリアルタイムで確認できる」ということが、オーナーにとっての「利便性」につながっているから成り立つサービスというわけです。もっとも、飼育している猫が「シュレーディンガーの猫※)」の場合、スマホで見ている瞬間以外はどうなっているのか分からないため「利便性」の範囲も変わってきます。
※)シュレーディンガーの猫:量子力学に関する思考実験。量子力学では「電子の位置は観測されない場合複数存在する」が、電子の位置によって毒ガスが噴き出す装置を猫と一緒に箱の中に入れれば、「人が箱を開けて観測」しなければ、生きている猫と死んでいる猫が同時に存在するというパラドックス。
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