IoTサービスのカギを握る「顧客コスト」と「利便性」:製造業のためのサービスビジネス入門(5)(2/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)の進展により製造業においてもサービスビジネス拡大が期待されています。本連載ではサービスビジネスの基本的な話を分かりやすく解説しています。5回目となる今回はIoTをベースとしたサービスビジネスでも重要になる「顧客が負担するコスト」と「利便性」について解説していきます。
単純な「価格」を意味するわけではない「Customer Cost」
まずは「Customer Cost」について説明します。ここで注目しなければならないのは、「価格」を意味する「Price」ではなく、「Cost」という表現をあえて使っている点です。これは、エンジニアリング事業者との間で取り交わされる契約上の支払金額のみではなく、同サービスを活用することにより発生する各種費用・経費などについても織り込んで考える必要があるということを示しています。初期費用と運用費用を併せて考えると思えば分かりやすいでしょうか(実はこの考え方はモノにおけるマーケティングの4Pについても同様です)。
さて、これをIoT視点で見ていきましょう。例として、機械にセンサーを取り付けて各種操業データ、加工データなどを集め、そこから最適加工条件のフィードバック、メンテナンスサービスを提供するような場合を考えてみましょう。まずは、このシステムのエンジニアリング費用、システム構築費用、センサー費用などが「Price」として認識され、この部分は一般的にはサービス受給者からサービス提供者(どちらかとえいば施工業者もしくはエンジニアリング業者)に直接支払いが行われるのが一般的な形だと思います。
しかし、サービス受給者はこれだけでは最終的に求める「Custmer value」を受けることができません。「Price」部分以外に通信などの運用に関する費用が発生します。これらは社外流出費用として認識できる場合が多いです。もう1つ重要な費用として、同サービスからのアウトプット情報をサービス需給者がどのように処理するかで負担経費が大きく異なる場合があります。もしアウトプット情報をさらに自社でデータ加工したり、そのデータに基づく機械の操業条件設定変更を人手で行い確認しなければならない場合は、これらに要する工数を費用として捉えることもできます。
反対に、最適加工条件フィードバックが自動化されたサービスである場合、オペレーターへの教育工数や不慣れなことによる品質安定性の劣化といった部分を低減することも可能です。これによる経費低減効果は小さくはないはずです。一般的にはこれら費用は労務費などの中に含まれ社外流出費用として認識しにくい部分ではありますが、確実に費用としてどこかに紛れこんでいます。サービス提供者の立場からいえば、サービス内容とサービス提供価格とサービス利用によるコストメリットをバランスよく訴えることが重要となってきます(図2)。
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