プールの“お掃除ロボ”でシェア1位! 自社製品でニッチ市場を制した下町企業の挑戦:イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(2)(4/4 ページ)
自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。第2回となる今回は大阪市此花区でポンプ関連製品の販売、メンテナンス事業などを手掛ける四柳だ。
社員一丸で業績アップを目指す
現在の四柳が抱えている課題は、「営業力の強化」だという。先代社長の清氏は、根っからの技術者で「いいモノを作れば、売れる」という信念のもと自社製品の開発と改良に取り組んだ。その清氏の後を継いだ四柳社長は、大学を卒業後すぐに自社に入社した。当時は人手も足りず、自分が先代社長を支えていくしかなかった。他社で修行を積む余裕はなかったという。
先代と一緒になり事業の基盤を作り育ててきた四柳社長だが、時代が変わりこれまで通りのやり方では厳しいと感じていた。だからこそ、後継者である息子の晴雄氏には、他社での経験を積ませたかったという。大手企業であれば、いろいろなノウハウを持っている。
大手企業2社で経験を積んだ後に、晴雄氏は四柳に入社した。「ずっと黒字経営なのに、会社に活気がない。面白くない会社だ」と感じたそうだ。社員のホンネを知りたくて、それまでは社内になかった“飲みュニケーション”を積極的に行った。
社外でのコミュニケーションの機会を作ることで、若手社員たちも四柳社長には直接言えない本音を自分に話してくれるようになったそうだ。そういった本音の1つとして、営業から「頑張っても給料が上がるわけじゃないし……」と不満がこぼれたという。
同社には、成果を出せばそれに応じた評価をする土壌がちゃんとある。しかし、社員にそれが伝わっていなかったのだ。晴雄氏はそのズレを埋めるべく、営業の成績を契約件数だけではなく、訪問や見積もり提出の件数も加味して評価する方式に変更。社員が自ら立てた目標に対して、どのように成果を出したかを“見える化”できるように改善した。
こうして会社が社員のガンバリに応えると、営業が楽しそうに仕事をするようになり業績もアップしはじめたそうだ。四柳社長は、こうした晴雄氏の活躍をうれしそうに語った。
「今、自分はポンプ事業部しか見ていなくて、自社製品の事業にはノータッチです。本気で頑張っていくのはこれからです」と晴雄氏。社員に会社を好きになってもらいたい、社員が元気に働く会社にしていきたいと抱負を語る。
顧客の要望を吸い上げて、自社製品をシェアNo.1にしたように、四柳はこれから社員の声とやる気を吸い上げて、社員とともに業績を伸ばしていくのだろう。
筆者プロフィール
松永 弥生(まつなが やよい) ライター/電子書籍出版コンサルタント
雑誌の編集、印刷会社でDTP、プログラマーなどの職を経て、ライターに転身。三月兎のペンネームで、関西を中心にロボット関係の記事を執筆してきた。2013年より電子書籍出版に携わり、文章講座 を開催するなど活躍の場を広げている。運営サイト:マイメディア
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