プールの“お掃除ロボ”でシェア1位! 自社製品でニッチ市場を制した下町企業の挑戦:イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(2)(3/4 ページ)
自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。第2回となる今回は大阪市此花区でポンプ関連製品の販売、メンテナンス事業などを手掛ける四柳だ。
高齢化が進む離島に新型ボーディング・ブリッジの導入が進む
四柳社長は、プールクリーナー事業と並び、同社のもう1つの自社製品であるボーディング・ブリッジ事業について「今年(2015年)の春までは、ボーディング・ブリッジ事業部の受注が重なって、社内はてんてこ舞いだったんです」と語る。
ボーディング・ブリッジは、フェリーに乗客が乗降する際に利用する可動式連絡橋だ。立て続けに同製品の依頼が舞い込んだのは、2010年に鳥取県 隠岐の島の西郷港にボーディング・ブリッジを納入したことがきっかけだった。
西郷港に最新式の可動式連絡橋が納入されたことを、ニュースで知った北海道 利尻島の関係者から問い合わせがあったのだ。その結果、利尻島の鴛泊(おしどまり)港、沓形(くつがた)港、礼文島の香深港、稚内港、宗谷港と、北海道の北端と離島をつなぐ港から5件も発注があったという。
自社開発のボーディング・ブリッジは、1971年から神戸や大阪を中心に、国内の港に次々と納品してきた。ところが、交通事情の変化に伴い状況が一変した。本州と四国、九州を結ぶ橋が架けられ、 島へ渡る手段がカーフェリーから車になった。フェリー会社は乗客が激減し、統廃合を余儀なくされた。同社のボーディング・ブリッジ事業部にも大きな影響が出た。
2010年に舞い込んだ西郷港からの発注は、以前の装置が老朽化し、新設する必要があったためだ。バリアフリー法によって、公共機関が設備をバリアフリー化する際には、国が設置費用の半額を補助するというのも受注の後押しとなった。新型機の導入で、待合室から船までスロープで移動できるようになり、高齢者も車いすの方も船への乗降がラクになる。その利便性が高齢化が進む離島で高く評価され、受注が相次いだのだ。
“3つの柱”が支え合い、厳しい経営状況を乗り切る
ボーディング・ブリッジの受注が厳しいときには、プールクリーナー事業に勢いがあった。一方、プールクリーナーが各施設に行き渡り、受注が落ち着いた頃に、今度はボーディング・ブリッジの依頼が続いた。このように2つの自社製品事業がその時々の状況を察知したように、四柳の経営を支えてきたのだ。「運がいいんでしょうね」と四柳氏は言うが、果たして運だけだろうか。
同社の会社の屋台骨を支えてきたのは、ポンプ事業だ。ここで毎月の売り上げを確保できているから、自社製品をじっくりと育てることができた。市場環境が厳しい時でもこうして育て続けた2つの自社製品事業が支え合い、うまい具合に補完し合うことで乗り越えられたのだ。
中小製造業が自社製品を開発し、さらに安定的な売り上げを確保することは容易ではない。しかし四柳は自分たちの強みである技術を活用しやすい分野で、さらに大手が参入できないようなニッチ市場にフォーカスしたからこそNo.1になれた。そしてNo.1になるために顧客の要望に対し、長期間にわたって真摯(しんし)に製品の改良や保守を続けてきた。
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