スズキとフォルクスワーゲンの提携解消を認定、契約違反の賠償問題は残る:3年9カ月越しで決着
スズキが国際仲裁裁判所に申し立てていたフォルクスワーゲンとの提携解消が認められた。これにより、フォルクスワーゲンはスズキの19.9%の株式をスズキに売却することを命じられた。一方、フォルクスワーゲンが反訴していた提携中の契約違反も認められており、引き続き賠償額などが審議されることになる。
スズキとVolkswagen(フォルクスワーゲン)は2015年8月30日、スズキが国際商業会議所国際仲裁裁判所(以下、国際仲裁裁判所)に申し立てていたフォルクスワーゲンとの提携解消に関する仲裁判断の内容を発表した。
スズキとフォルクスワーゲンは、2009年12月に革新的かつ環境技術を駆使した小型車の開発と、新興国の自動車市場における市場拡大を目的に協力することで合意。この合意に基づく提携を結ぶとともに、フォルクスワーゲンがスズキの株式を19.9%、スズキがフォルクスワーゲンの株式を1.5%取得した。
しかし2011年11月18日、スズキが「フォルクスワーゲンの技術へのアクセスを可能にするため、フォルクスワーゲンからの申し入れに従って19.9%の出資を受け入れたが、当初の合意にもかかわらずコア技術へのアクセスなど契約内容の実現ができなかった。両社の間で『独立』の考え方に大きな開きがあることも明らかになり、協力の基礎である相互信頼関係の構築が果せなくなった」として、提携解消とフォルクスワーゲンが持つ19.9%の株式をスズキに売却するよう通告。同年11月24日に国際仲裁裁判所に申し立てていた。これに対してフォルクスワーゲンも、スズキの主張を認めないことや提携のための包括契約違反について国際仲裁裁判所の反訴していた。
スズキの申し立てから約3年9カ月が経過した2015年8月29日(欧州時間)、国際仲裁裁判所が仲裁判断を発表。結果としては、スズキの申し立てていた提携解消とスズキ株式の売却、フォルクスワーゲンが求めていた包括契約違反が認められた。
まず提携解消については、スズキのフォルクスワーゲンへの通告により、2012年5月18日に提携のため結んでいた包括契約が解除されたことを認めた。また、フォルクスワーゲンが持つ19.9%のスズキ株式についても、フォルクスワーゲンに対して、スズキもしくはスズキの指定する第三者に売却することを命じた。
一方、フォルクスワーゲンが申し立てていた、「2010年末、2011年初頭に当時進行中だった協業プロジェクトを突如中止し、フォルクスワーゲンに対して、ディーゼルエンジン供給に関する『最終交渉権』の行使を認めなかった」という内容の包括契約違反も認められた。これによりフォルクスワーゲンは、スズキに対して損害賠償を請求する権利を保持し、この契約違反に基づく損害の有無や額について引き続き国際仲裁裁判所で審議することになる。
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