自動運転シンポジウムの主役はグーグル、自動車メーカーはなぜ発表を控えたのか:Automated Vehicleシンポジウム2015リポート(前編)(5/5 ページ)
2015年7月21〜23日、米国ミシガン州アナーバーで、自動運転技術のシンポジウム「Automated Vehicleシンポジウム2015」が開催された。前回の2014年と比べて参加者が倍増するなど盛況だった。しかし、自動車メーカーが自動運転技術に関する発表を控えたこともあり、Google(グーグル)が一番の注目を集めることになった。
買収報道が過熱するHERE
Google Xに加えてもう1社、シンポジウム参加者の注目を集めていたのがドイツに拠点を置くHEREだ。
Nokia(ノキア)の100%子会社でデジタルインフラストラクチャ関連の企業。PCやスマートフォン向けのデジタル地図の分野では世界シェアトップである。同社が注目される理由は「誰がHEREを買うのか?」だ。売却先としてこれまで、Microsoft(マイクロソフト)、Facebook、Uber(ウーバー)などさまざまなIT系企業の名前が挙がっていた。
そして今回の講演当日、ウォール・ストリート・ジャーナルなど複数メディアが「BMW、Daimler(ダイムラー)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)グループ傘下のAudi(アウディ)が主体となるドイツ自動車メーカーの連合体が、HERE買収で近く基本合意する」と報じた(関連記事:アウディもBMWもダイムラーも欲しがる高精度地図データの雄、HEREの現在地)。
なぜこうした連合体で買収する必要があるかについては、筆者がHERE本社で独自に収集した情報があるが、本稿はAUVSIの動向が主題なので、詳細は別の機会に譲る。なお、今回のHEREの講演では、買収に関する話題は出なかったが、「地図情報の共有化」について強調し、HEREの置かれている状況が大きく変化することを示唆した。
後編では、米国における自動運転の法整備の動向を主体に、世界の各国地域における自動運転の施策や実証試験の現状について触れる。
筆者プロフィール
桃田 健史(ももた けんじ)
自動車産業ジャーナリスト。1962年東京生まれ。欧米先進国、新興国など世界各地で取材活動を行う。日経BP社、ダイヤモンド社などで自動車産業、自動車技術についての連載記事、自動車関連媒体で各種連載記事を執筆。またインディカーなどのレース参戦経験を基に日本テレビなどで自動車レース番組の解説も行う。
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