Apple流の「網」が張られた家庭内IoT規格「Homekit」:IoT観測所(11)(3/3 ページ)
Appleの「Homekit」は家庭内の対応デバイスをiOS端末から操作可能にするホームオートメーションシステムであり、「家庭内IoT」を実現する手法といえる。Appleならではの「網」があり、便利だが汎用性に乏しい一面もある。
HomeKitのデメリット
先にAppleにとってのメリットの1つに「囲い込み」を挙げたが、これは逆に言えばそのままの仕組みを他のプラットフォームに持ってゆけないという意味でもある。
なのでアプリケーションとして他のプラットフォームもサポートしたいと思った場合、(HomeKit+その他の)デュアルスタック構成がデバイス側に求められる事になる。ただ、アプリケーションプロセッサ+大容量メモリを実装できるようなリッチなデバイスはともかく、MCU+センサー+αで構成される低価格なデバイスeに、果たしてデュアルスタックを実装する余地があるかどうかはかなり疑わしい。
また逆に、iOS側のアプリケーションについても、HomeKit+Threadのような構成をサポートできるかといえば現状の答えは「No」である。HomeKit FrameworkはHAPのみしかサポートしないし、HomeKit Framework上のアプリケーションにその他のIoTスタックを実装した場合、それがAppStoreの審査を通るのか現状では定かではない。
HomeKitを使う場合は「iOS+HomeKitで実現できる範囲以上の事はできない」と考えておいたほうが良く、これを良しとするかどうかは判断が分かれるだろう。
またHomeKitの適用はあくまでホームオートメーションの分野に限られている。Appleが提供するAppStoreのReview GuidelinesのHomeKitの節には最初に「Apps using the HomeKit framework must have a primary purpose of providing home automation services」(HomeKit frameworkを利用するアプリケーションの主たる目的は、Home Automation Serviceを提供する事にある)としており、ここから外れそうな用途ではApp Storeの審査を通過しない可能性がある(App Store Review Guidelines)。
こうした縛り方はいかにもAppleらしいところで、それが良いとか悪いという話ではないのだが、IoTの分野がHomeKitで席巻されてしまう、という見方は早計であることはお分かり頂けるかと思う。後は、IoTのホームオートメーション分野をどれだけHomeKitが獲得できるか、というあたりが今後の見どころになると思われる。
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