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出場チームに聞く「DARPA Robotics Challenge」決勝戦の舞台裏(後編)、「世界との差は開いた」が2020年には“現場”へロボット大国日本は負けたのか(4/4 ページ)

世界から23チームが集まった、災害対応ロボット競技会「DARPA Robotics Challenge」決勝大会。日本からの参加は最高10位と決して振るわず、世界との差を痛感することになったが、産総研チームでは得られた課題から2020年の“現場入り”を目指す。

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今後のロボットに必要なもの

――今回の優勝タイムは44分28秒だったわけですが、もし人間がやったとしたら、5分か10分くらいで終わるような内容です。ロボットには何が足りないのでしょう。

金広氏: まずソフトウェアの能力です。最速タイムは確かに44分28秒ですが、ロボットが静止している時間を除くと、半分くらいになります。ロボットが止まって計測したり、オペレータが何かやっている時間を無くせば、20分くらいまでは短縮できるはず。まだまだソフトウェアの認識能力を向上させる必要があるでしょう。

 一方で、ハードウェアは今あるものでいいかというと、そういうわけではありません。まずは、今回も非常に重要でしたが、倒れても壊れないようにすること。それに手の機能も、人間に比べると低いです。現状は事前にタスクが分かっているのでそれに対応するハンドを作ることができますが、万能なハンドの実現はまだ遠い。

 実際の現場で活動するとなると、狭い場所で作業することもあるでしょう。背中やお尻にはセンサーが無く、環境に接触してもロボットは気が付かないので、今後、全身の皮膚触覚のようなものも必要になると考えています。ハードウェアはハードウェアでまだまだ進歩の余地はありますね。

――HRP-4の発表からもう5年になりますが、HRP-5のような、次の新型ロボットの計画は無いのでしょうか。

金広氏: 新規に開発する計画は、今のところありません。いろいろとやりたいことはあるのですが、残念ながら予算が……。今回はHRP-2を改造して出場しましたが、HRP-2は10数年前に開発したロボットなので、基本設計がかなり古いのは否めません。転倒への対応とか、今後やるべき課題に取り組むためには、新たな日本製プラットフォームが必要になってくるでしょう。

――今回得られた経験を、今後、どのように生かしていこうと思っていますか。

金広氏: 2回転倒してしまいましたが、その原因の1つはさまざまな試験がちゃんとできていなかったことです。成熟度やロバスト性が向上できていませんでした。通常の論文を書く研究活動では、どうしてもそのあたりは後回しになってしまうのですが、やはり現場に入って確実に動くロボットを作るためには、おろそかにしていいところでは無いと強く感じました。

――そこは研究機関である産総研ではなく、メーカーの役割では無いのですか?

金広氏: 境界は難しいところですが、ヒューマノイドはまだ実際に買って使おうというお客さんがいないのが現状です。光明が見えつつありますが、最初はまず、ヒューマノイドが役に立つところを見せて、理解してもらう必要があります。競技会とは言え、バタバタとロボットが倒れて、人間が助けないと起き上がれないようでは、誰も使いたいとは思わないでしょう。これは解決したところを見せないといけない。

――2020年にはロボットオリンピックという話も出ていますが、何か目標は。

金広氏: 2020年だとまだ商品化は難しいかもしれませんが、現場に入るメドぐらいは付けたいですね。まだ具体的に話せる段階では無いのですが、今いろいろ始まりつつ話もあって、人間の代わりに作業現場に入り、「これは使えそうだ」と思ってもらえるロボットが、そのくらいまでにはできていないといけないと考えています。

 また東日本大震災の後、福島第一とは別の原発を視察して、中の状況を見せてもらったことがありますが、人間でないと作業できないような場所がたくさんありました。ヒューマノイドであれば、人間の環境にそのまま入って行けます。本当にヒューマノイドが必要なんだということを改めて確信しました。廃炉の作業もまだ時間がかかりますので、できるだけ早い段階で投入できるようにしたいと考えています。

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