出場チームに聞く「DARPA Robotics Challenge」決勝戦の舞台裏(後編)、「世界との差は開いた」が2020年には“現場”へ:ロボット大国日本は負けたのか(3/4 ページ)
世界から23チームが集まった、災害対応ロボット競技会「DARPA Robotics Challenge」決勝大会。日本からの参加は最高10位と決して振るわず、世界との差を痛感することになったが、産総研チームでは得られた課題から2020年の“現場入り”を目指す。
優勝チームが勝てた理由
――優勝したのは韓国のTeam KAISTでした。どんなチームでしたか
金広氏: 会場のガレージで、われわれの向かいがTeam KAISTだったのですが、見ていると、練習のときから転倒防止用ヒモを付けていなかったのです。ウチなんかは心配で仕方ないので、本番以外は、可能な限り外しません。競技後のワークショップで聞いたのですが、彼らは1カ月くらい前から、ヒモを外して練習していたそうです。本番だけ外すとオペレータが緊張してしまうと。
1カ月も前に、ヒモを外せる状況まで持って行けたのはすごいことです。しかも、それだけ準備したにも関わらず、現場では夜中もずっと作業している。彼らのDRCに対する意気込みは並々ならぬものがありました。
――彼らのロボットDRC-Huboは、2足歩行と車輪を組み合わせていましたが、あれが効果的だったように見えました。
金広氏: 車輪があることで、ガレキタスクを短時間でクリアできました。不整地タスクを選択した2位のTeam IHMC Roboticsとの差は6分ほど。そのうちの何分かはガレキのタスクで稼いだタイムなので、車輪の有無が勝因の1つであることは間違いないですが、ただ、決してそれだけではありませんでした。
ガレキタスク以外を見てみても、全般的にすごく早い。なので「飛び抜けた何かがあった」というよりも、全てのタスクで完成度が高かったというのが勝因といえるかもしれません。どのタスクも非常に入念に準備がされていました。
――日本勢は最高でも10位ということで、「惨敗」と報じるメディアすらありました。海外との技術力の差はどう見ていますか。
梶田氏: 私は正直、「だいぶ差を付けられてしまった」と思っています。特に降車のタスクでのバランス制御能力。Atlasを使ったTeam IHMC RoboticsとTeam MITは本当に素晴らしい。Team MITがYouTubeにアップしていた動画を見たんですが、人間が車をガンガン揺らしてもバランスを取っていて、これはすごいと。
金広氏: あの動画は驚異的でした。
梶田氏: 「降車なんて簡単だ」と思われるかもしれませんが、車から降りようとすると、体重移動で車は必ず揺れます。数cmくらいグラグラ揺れるところで、バランスを取って地面に降りられるのは、間違いなく最先端の安定化制御技術と言えます。
――恐らく、日本で降車タスクに注目している人はほとんどいなかったと思います。
梶田氏: 全タスクの中で降車は技術的に一番難しかったですね。
金広氏: われわれも一応準備は進めていましたが、8つのタスクの中では一番成功率が低かったので、とりあえず初日はパスしようという作戦でした。ところが初日はドアのところで倒れてしまったので、2日目は安全策を取らざるを得なくなり、結局降車タスクには挑まず、屋内のタスクに進みました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.