医療用ヘッドマウントディスプレイは単眼と両眼どちらが本命か:国際モダンホスピタルショウ2015(2/2 ページ)
医療分野でも注目されるウェアラブル機器だが、ヘルスケア分野で活用が進む腕時計型と違い、メガネ型は普及しているとはいえない。そんな中、ヘッドマウントディスプレイを展開するブラザー工業は、医療用モデルを投入した新製品に単眼式を採用した。一方、セイコーエプソンは、遠隔医療で両眼式が力を発揮するという。
両眼式は遠隔医療で生きる
ブラザー工業と同じく、メガネ型ウェアラブル端末の製品化に注力しているのがセイコーエプソンである。同社も国際モダンホスピタルショウ2015に出展し、2014年6月に発売した「MOVERIO(モべリオ)」と、2015年9月発売予定の「MOVERIO Pro(モべリオ プロ)」を展示していた。
ブラザー工業がエアスカウターの新製品発売時に単眼式に変更したのに対して、セイコーエプソンはモベリオ、モべリオ プロとも両眼式である。
セイコーエプソンが、モベリオの医療分野の用途として挙げていたのが、検査待ちの患者に検査の注意事項や内容を分かりやすく説明するための端末だ。CTやMRIは、検査時に狭い装置内部に身体を入れなくてはならないため、患者が不安を感じてしまうことが多い。そこで、モベリオを使って検査手順をあらかじめ説明しておけば不安を取り除ける上、ウェアラブル端末なので待合所に機器を設置する必要もない。
ただしこの用途は医療分野として本流とは言いづらい。そこで、医療分野における両眼式のメガネ型ウェアラブル端末の可能性について同社の説明員に聞いてみた。
「シースルーで映像を目の前に映し出すモベリオのような両眼式は、対象物に映像を重ねて表示できることが特徴になる。この特徴は、医療分野であれば、離島などで働く医療従事者を遠隔から支援する遠隔医療に活用できる。遠隔地にいる医療従事者にとって、自身の専門分野と異なる病気を本格的に治療することは難しい。手術を伴う場合はなおさらだ。しかし、両眼式のメガネ型ウェアラブル端末を使って、遠隔地にいる専門医がサポートすれば、患者をその専門医のいる病院まで移動させることなく治療できるかもしれない。そういった遠隔医療の用途での評価も少しずつ進めているところだ」(同説明員)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 医療機器はシャープの新たな柱になるか、「健康コックピット」などずらり
シャープは、「国際モダンホスピタルショウ2015」において、同社が新規事業として期待を掛ける、「健康コックピット」などの医療関連機器をまとめて披露した。 - ヘルスケア向けウェアラブル機器、“価値の創造”はまだこれから
ヘルスケア向けのウェアラブル機器は勢いに乗っているように見える。確かに、製品は大量に市場に投入され始めてはいるが、「本当に価値を提供できるサービスにはいきついていない」という見解もある。 - 「先制医療」実現目指し、JINSとオムロンヘルスケアが共同プロジェクト
JINSブランドを展開するジェイアイエヌと、体組織計などを製造するオムロンヘルスケアがジェイアイエヌのウェアラブルデバイス「JINS MEME」をベースにした、「先制医療」実現を目指した取り組みを開始する。 - 胸部に貼って脈波などを連続計測、東芝のウェアラブル生体センサー
東芝のウェアラブル生体センサー「Silmee Bar type」は、ゲルパッドで胸部に貼り付け、心電位、脈波、体動、皮膚温といった生体情報を同時に連続計測できる。国内の大学/研究機関/企業向けに2014年9月から販売を開始する。 - 米国ベンチャー発、子どもや高齢者を“みまもる”ウェアラブル機器
CareProductの腕時計型/ブレスレット型ウェアラブル機器は、立っている、横になっているといった、ユーザーの行動パターンをモニタリングする。ビーコンと組み合わせて使うことで、ユーザーがいつもとは異なる場所で異なる行動パターンを取っていた場合、アラートが発信される。カメラを使用しないので、プライベートに配慮したみまもりシステムが構築できるとしている。