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高齢化社会に挑む米国のヘルスIT戦略とイノベーション海外医療技術トレンド(1)(2/2 ページ)

米国と欧州を中心に海外の医療技術トレンドを追う本連載。第1回は、日本と同様にベビーブーマーの高齢化という課題を抱える米国のヘルスIT戦略を紹介する。

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ベビーブーマー高齢化で求められるヘルスITのイノベーション

 この流れを受けて2014年12月、ONCより公表されたのが、「連邦ヘルスIT戦略計画2015−2020」(関連資料、PDFファイル)だ。2011〜2015年の実施期間を通じて導入が進むヘルスITシステムの状況を踏まえ、新たなビジョンとして挙げたのが「人々の健康や幸福を向上・保護するために、いつでも、どこでも健康医療情報にアクセスできること」である。情報技術の利用によって、健康とヘルスケアを向上させながら医療費を削減するため、以下の5つの目標を掲げている。

  • 目標1:ヘルスITの採用拡大
  • 目標2:セキュアで相互運用性のある健康医療情報の促進
  • 目標3:医療供給の強化
  • 目標4:個人およびコミュニティの健康と幸福の促進
  • 目標5:研究・科学知識・イノベーションの促進
図2 全国共有相互運用性ロードマップ
図2 全国共有相互運用性ロードマップ(クリックで拡大) 出典:Office of the National Coordinator for Health Information Technology 「Shared Nationwide Interoperability Roadmap: The Journey to Better Health and Care」(2015年1月)

 さらに、2015年1月、ONCは「国家のためのコネクテッドヘルスとケア:相互運用性ロードマップ草案バージョン1」(関連資料、PDFファイル)を公表した。

 図2は、ONCが公表した全国共有相互運用性ロードマップ(関連資料、PDFファイル)である。2017年をめどに患者と医療機関の情報共有への取り組みに注力し、2020年をめどにモバイルヘルスやウェアラブル機器との連携を加速させ、2024年までに自律的な学習型医療システムの実現を目指す取り組みを行う方向性が示されている。

 米国では、第2次世界大戦直後から急増したベビーブーマー世代の高齢化が進行しており、その第1世代は、日本の「団塊の世代」とほぼ同じタイムラインで動いている。この流れをにらみながら、既存のICTベンダー/サービスプロバイダーや、新興のヘルスケア系スタートアップ企業が、科学技術イノベーションの事業化実現に向けて切磋琢磨している。

 日本でも、2015年6月、厚生労働省が保健医療政策の長期ビジョン「保健医療2035」を発表したところだが、米国と比較すると、医療情報共有の取り組みが遅れている。日本がPDCAサイクルを回すためには、相互運用性の確保と標準化が大きな課題になっており、米国の今後の動向は要注目だ。

筆者プロフィール

笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)

宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。

Twitter:https://twitter.com/esasahara

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